「おっ!」
夜も更けてしばらく。浴場の入り口から中をのぞき込んだレイヴンは楽しそうに声を上げた。
一応言っておくが、のぞいたのは女湯ではない。さすがのレイヴンも、この船でのぞきを行いそしてバレた後の制裁を考えると手は出せない。
そんなわけでのぞいたのは男湯である。別に男の裸を見る趣味はないが、
「ヴェイグちゃんは別、なんてね」
にしし、と笑って、レイヴンはするりと浴場に滑り込んだ。
別に堂々と入ってもなんの咎めもないのだが、そこは気分の問題だ。
脱衣所の籠の中には二人分の服が入っている。黒を基調にしたユーリのもの、それから黒と青を基調にしたヴェイグのもの。
よし、と一つ頷いて、レイヴンはドアに手をのばす。服は着たままである。なぜかと言えば、ノリで入っていじるだけだから。
伸ばした手が取っ手にかかる瞬間、ドアは独りでに開いた。
立っていたのはタオルを腰に巻いた状態のユーリ。
「よぉ、おっさん」
「あ、あら青年奇遇ねぇ!」
反対側からドアを開けたユーリは、レイヴンを見やって片眉を上げた。
レイヴンはあからさまに動揺して声をかける。服を着たままの入浴希望者を上から下まで眺めて、ユーリは笑みを浮かべた。
これから風呂か?と首を傾げる。
「そ、そうなのよ!」
「へぇ・・・さっき出てくるところ見かけたけどな?」
意地の悪い笑みのまま切り返される。確信犯である。
あらやだ、おっさんも年かしらねぇ・・・。
それでも白を切るらしいレイヴンが視線をそらした。記憶を探っているつもりらしいが、目が泳いでいるようにしか見えない。
ユーリはレイヴンを入り口の方へと追い立てながら用意しておいたタオルをつかむ。髪を適当に拭うと、肩を竦めて見せた。
「ま、二回入ったって悪いわけじゃないが」
「が?」
「とりあえず外出ててくれねぇか」
今ちょっと取り込み中でな。
さっさと服を身につけたユーリがレイヴンに視線を投げた。
え、えーと。言葉を探そうとするレイヴンにポキポキと指を鳴らしてみせる。口元は上がっているが、身にまとう空気は鋭い。
素手のはずの手に彼の愛剣が見えた気がした。
場を保たせるために浮かべた笑みは乾いている。
「なぁ、おっさん?」
「・・・し、しょうがないわね」
今日のところは退散!
早々に白旗を揚げて、レイヴンはユーリに背を向ける。
このまま浴室にダッシュという手もないではないが、成功する可能性は限りなくゼロに近い。ついでに報復が増えるのは確実だった。
おやすみー、と平静を装って言い残し、レイヴンが浴場を出ていく。
神経を尖らせて気配を探ってから、ユーリは口を開いた。
「いいぜ」
数秒の後ドアが開いて、ヴェイグが出てくる。
溜息を一つ落とした彼は、疲れた様子で頭からタオルを被った。
「ったく、油断も隙もねぇな、あのおっさん」
「・・・ユーリのせいだろう」
こんなことする羽目になったのは。
軽く逆上せたらしく、服を羽織ってすぐにイスに腰掛けたヴェイグの後ろに立つ。
そのまま被ったままのタオルを取り上げて、ユーリはヴェイグの髪を拭い始めた。自分の髪を拭ったときよりかなり丁寧である。
手を動かしながらごちると、小さく不満げな声が返ってきた。ん?と後ろでわからないフリをしてみせる。
「なんだよ、ヴェイグ?」
言わなきゃわかんないぜ?と畳みかければ、触れたところからじりじりと体温が上がるのが感じられた。髪を拭く動きで横に流せば、覗く耳も赤くなっている。
ヴェイグの言いたいことはもちろんわかっているのだが、
「・・・跡はつけるなと、言ったのに・・・っ!」
自棄のように言ったヴェイグに笑みを浮かべる。
今は服に隠れて見えないが、身体全体に紅が散っていた。
思い出すだけで恥ずかしいらしいヴェイグが俯くと項の印が露わになる。それに笑みをますます深めたユーリが、再びそこに唇を寄せた。
(・・・しばらく触るのは禁止だ)
(え?)
(跡が消えるまでは触らせない)
(あ、おい!ヴェイグ!)
おっさんごめん完全にだしになってる(笑)
最初はおっさんとユーリの攻防(でもないけど)しかなかったはずでした
ヴェイグはちょっとだけ出てくるか出てこないかみたいな話だったはずなのに。なんでこうなった・・・w
いつもユーリさんばっかり楽しい感じだったのでオチだけユーリさんに復讐してみた
ヴェイグがユーリに対してここまで言えるのかが最大の疑問(笑)
言わなくてもわかるけどみんなと同じ時間にお風呂に入るわけにいかなくなったので夜中に入りましたというお話です
ユーリは見張りというか護衛兼一緒に入ろうぜという流れ。いいところばっかりもっていきますw
ユーリさんは理性が働きそうなのでお風呂で襲ったりはしないですたぶん
ていうかこれ以上やってヴェイグがぷっつんした場合確実にお風呂場で氷漬けにされるのでさすがにやらないw
ヴェイグがそういう手段に出るかはおいといて。あ、でも誰も来ないって保証があればやると思います(笑)
誰かそういうの書いてくれませんか←
110321