花氷*


 彼はなにも指示しない。
 命令するのは戦の前くらいで、政治に関することは、すべて右腕に任せていた。あくまで自分は復讐者であり協力者ではないのだと、彼の元に下ったときに主張しそれは受け入れられたはずなのに。
 是、是、是。
 彼は、それしか言わない。
「陛下、民の方から減税を望む声がでておりますが」
「財政はどうなっている」
「今のところ緊迫してはおりません」
「ならば、おまえに任せる」
 話は聞くけれど、最終的な言葉はすべて「おまえに任せる」。
 どんな内容でも大体はそうだ。彼がなぜここまで自分を信用しているのか、わからない。
 私室で書物をめくっているガイアスを眺め、ウィンガルは考える。
 首を狙うなら近くがいいだろうと、さらりと彼は言った。そしてその言葉を翻すことなく、本当にウィンガルを隣に置いている。
「陛下」
「どうした」
 視線を上げないままガイアスが答える。
 今増霊極を発動して切りかかれば、・・・いや、剣がなくとも首に手をかければ、彼の命を絶つことは容易いだろう。
 ガイアスの手元には剣はない。素手の彼と増霊極を発動した自分とならば、おそらくこちらに勝機がある。
 それなのに、彼は気配を尖らせることすらしない。
 ウィンガルはガイアスの元に近づいて、ぐい、と顔を上げる。表情を動かすことなくガイアスはそれに従って、ウィンガルを見つめた。
「警戒心が足りないのではないか」
 これではいつでも首がとれてしまう。
 ウィンガルはそう続けて、白い指を首筋に滑らせる。力を入れれば、命を奪える。そんな意図を込めた。
 けれど。
 ガイアスはその状態で口元に笑みを刻んで見せる。
「ウィンガル」
「なんだ」
「やりたければやればいい」
 心なしか楽しそうに言ったガイアスに、ウィンガルは片眉を上げる。
 死んだら困るのだろうに、望んではいないのに身を預けるなど。わずかに力を入れてみても、彼の表情は変わらない。
 気管を狭めて、明らかに呼吸が苦しくなっているのに、その瞳が持つ意志は変わらなかった。
 そして折れたのは、ウィンガルの方。
「・・・ガイアス、」
 おまえはなにがしたいんだ。
 首筋から手を離して、ウィンガルは呟いた。字を呼ぶと、ガイアスは小さく笑う。
 さあな、
「おまえはやらないと思った。それだけだ」

信頼なのか、余裕なのか

(・・・かなわないな、おまえには)

  

  

難しい・・・
ア・ジュール主従。気持ちはウィンガイ
二人ともつかめなさすぎてぐだぐだしてしまった
陛下は傍に置いた人をすごく信用してるんじゃないかな。あまりにも信頼しすぎて裏切りとかしたくなくなるレベル(笑)
代表がウィンガルさん的な。
陛下が絶対的すぎてウィンガルを崩すしかない→ウィンガルキャラ崩壊→へたれ化という流れになりつつありますわたしの中で
個人的には陛下崩したいんだけどただの天然さんになりそうですいいですかね!←
すごすぎてほのぼの書けない気がするんだがどうしたらいいんだ
ていうか需要どうなのかしら。とりあえず供給は少なすぎて泣きそうですが!
111025