「誕生日?」
首を傾げたユーリに、エステルははい。と頷いた。それから知らないんです?と首を傾げる。
「明日はヴェイグの誕生日なんですよ?」
「・・・ヴェイグ、?」
ヴェイグがテルカ・リュミレースに来てから結構な時間が経った。
向こうとこちらで暦が同じとは限らないが、大まかな季節で照らし合わせれば確かに誕生日を知ることはできるかもしれない。
突然誕生日パーティをすると言い出したときはなにを言っているんだと思ったが、なるほどそういうことか。
ユーリは思って、けれど一つ問題がある。
エステルが知っていて、なぜ恋人である自分が彼の誕生日を知らないのだろう。
「明日、ねえ・・・」
ユーリは呟いて立ち上がる。
料理に関しては任せてくれ、とだけエステルに言い残して食堂を出た。調理場さえ借りればなんとかなるだろう。
再び首を傾げたエステルが、後ろ姿によろしくお願いします、と呟いた。
「よぉ、ヴェイグ」
部屋に戻り、ユーリは本を読んでいるらしいヴェイグに声をかける。振り向いたヴェイグが、白々しい声のかけ方に首を傾げた。
なにか、機嫌を損ねるようなことをしただろうか。
夕食を食べているときは普通だったし、その後は先に部屋に戻った。エステルに呼び止められていたから、自分がいては邪魔なのではないかと思ったのだ。
先に戻る旨は伝えたし、それに対してユーリは了承を返した。
つまりなにが言いたいかと言えば、機嫌を損ねるようなことをした覚えはない、ということ。
「ユーリ?」
どうか、したのか?
尋ねたヴェイグに笑みだけを返し、ユーリは歩を進めた。
ヴェイグの手の中に収まっている本を脇のテーブルに放り、肩を掴む。自分ごとその肩を押すと、油断していた身体はあっさりと倒れた。
ベッドに押し倒した状態で、ヴェイグを見下ろす。
「明日、誕生日なんだって?」
言うと、ヴェイグは目を瞬かせた。
押し倒されたことに対しての反応がないのは、それだけ信頼されているのだろうか。恋人ではあるが、少しは危機感を持ってもらいたいものである。
というのはとりあえず置いておいて。
エステルに聞いたぜ、とユーリが続ける。
「・・・ああ、この世界と向こうの世界とでは違うかもしれないが、季節的にこのくらいの時期だろうと、エステルが」
「オレは知らなかったけどな?」
言ったんだ、まで言い終わる前に、ユーリが口を開いた。
ヴェイグはその言葉の裏になんで言わなかったんだ、という意図を感じ取る。
なんでと言われると、言わなくても言いと思ったから、という答えになるのだが。それをこの状況で言ってもいいのか決めかねていた。
これのせいで機嫌が悪いのは、なんとなく理解したのだけれど。
「・・・・・すま、ない、?」
つけられた疑問符に、ユーリは溜息をつく。
どれだけ大切なことかわからないらしい。彼らしいといえば彼らしい話だが。
その溜息に反応して、ヴェイグが不安気にもう一度謝ってきた。
そんな顔をさせたいわけではなくて。
ユーリはどうするか考えて、それから笑みを浮かべた。せっかくこんなおいしい体勢なわけだし、
「じゃ、オレをプレゼント、だな?」
「・・・は、ちょ、」
ようやくこの体勢の危険に気づいたらしいヴェイグの言葉ごと、ユーリはその唇を塞いだ。
(・・・待て、今何時だと・・・)
(心配しなくても時間はたっぷりあるぜ)
(ユーリ・・・ッ)
というわけでTOR7周年おめでとうございます!
誕生日って概念がないのでヴェイグの誕生日ってことにしてみた
別タイトルだからできる荒技ですw
いろいろごめんなさいと言わざるを得ない
ユーリさんがだんだん大人げなくなる不思議です
しかし中途半端である。裏の書き方教えてください←
111216