花氷*


 おやつ時。
 鼻歌交じりに食堂に入ったユーリは、楽しそうに動き回っているクレアに声をかける。
 クレアは振り向いて、切り分けられていたらしいケーキを差し出した。今日はシンプルなガトーショコラらしい。
 大人の味を堪能しながら、ユーリはクレアに尋ねた。
「なんか楽しそうだな?クリスマスだからか?」
「ええ。毎年この日はおばさんがピーチパイを焼いて、お母さんがクリームスープを作って。村の集会場でパーティをするんですよ」
 今はこんな状況だから村でパーティする事はできないけれど、とクレアは表情を曇らせる。
 けれどそれはすぐに笑顔に変わって、ユーリを見上げた。
「だから今日は私が腕を奮いますね。おばさんのパイにもお母さんのスープにも負けないように」
「そうか。楽しみにしてるぜ?」
 てことでおかわり。
 あっと言う間に空になっていた皿を差し出すと、クレアが楽しそうに笑った。
「ユーリ?」
「よぉ、ヴェイグ」
 不意に声がして、ユーリが振り返る。
 ヴェイグがわずかに首を傾げて佇んでいた。
 手招きすると、クレアを見やってから近づいてくる。クレアはユーリの向かい側にヴェイグを促し、自分はキッチンに消えた。
「・・・その、」
「ん?」
「・・・邪魔だったか?」
 おずおずと尋ねてきたヴェイグに、ユーリは目を丸くした。
 なんだか、楽しそうだったから。
 そう続けたヴェイグに、今度は苦笑を見せる。
 そんなことねえよ、と否定して、ユーリはヴェイグに言った。
「クレアをとられそうで嫌だった?」
「ちが、」
 小さく意地の悪い笑みを浮かべるユーリは、ヴェイグの口をついた否定に目を瞬く。
 内心お、と思ったけれど口には出さずにすんだ。
 ヴェイグがクレアを大切にしているのは周知の事実だし、ユーリにもわかっている。それが家族のような感情だということも。
 だから、ちょっとからかっただけ。
 いつもならクレアはそういうんじゃない、と言われるだけ、なのだが。
「・・・ちがう、ユーリが、」
「オレが?」
 ヴェイグは小さく小さく頷いて、目をそらした。
 ユーリは再び目を瞬いて、そんなヴェイグを見つめる。
 クレアではなくて、ユーリ。その意味は、つまり、
「・・・っ!」
 気づいた瞬間に顔が熱くなるのを感じて、思わず片手で顔を覆う。
 柄にもなく恥ずかしい。そして、うれしい。
 言葉を失ったユーリを不思議に思ったのか戻ってきたヴェイグの視線が、珍しい様子を捉える。
 小さく名を呼ぶと、ユーリは我に返った。それから、とろけるような笑みを浮かべる。
「最高のプレゼントだ」
 自分がどれだけすごいことを言ったのかわかっていないヴェイグに言って、テーブルに投げ出されたままの手を取った。
 指先にキスを落とすと、今度はヴェイグの方が顔を赤らめる。
 その様子をキッチンから見ながら、クレアが微笑んだ。

いつの間にか一番特別

(ヴェイグ、私はユーリさんをとったりしないわ)
(・・・それは、わかっている)
(でも、ユーリさんからヴェイグを取り返すことはあるかも)
(言ってくれるじゃねぇか)

  

  

クリスマス爆発しろwというかクリスマス関係ないですねどうしよう←
ほんとは前半をもう少し変えて別の流れにしようと思ってたんですが、TOR7周年とオチがかぶったのでやめましたwユーリさん最近そればっか!←
クレアは家族なのでヴェイグの中でユーリ<クレアだったんだけど、いつのまにかユーリ>クレアになってた、というのに気づいてうれしくなっちゃったユーリさんの話です
説明しないとわかんないね!(ちょ)
ピーチパイパーティは定期的に開かれているらしいのでクリスマスはもっと特別かもしれない
最後のはわりと冗談です(笑) あとメリークリスマス言い損ねた!←
111224