花氷*


 もう俄雨の時期でもないというのに。
 軒下から空を見上げたヴェイグは、小さく溜息をついた。季節はすでに秋半ば。長雨ならば話は別だが、突然の雨の似合う時節ではない。
 ぽたりと、感じた滴に屋根の下に入ったのは正しかったようだ。
「しばらく、止みそうにないな・・・」
 鈍い色をした空に切れ間は見えない。風がないのが救いだろうか。
 濡れて帰るのも一つの選択肢ではあるが、この雨では・・・
「悪ぃ、ちょっと寄ってくれるか?」
「・・・ユーリ?」
 向こうから走ってきた男が隣に並ぶ。黒い服に身を包んだ長髪。見覚えのあるその姿に、ヴェイグはその名を呟く。
 ユーリはよぉ、と声をかけてから髪をかき上げた。髪からも服からも、ぽたぽたと水が滴っている。
「大丈夫か?」
「あぁ。ったく、なんでこんな時期に俄雨なんか降るかね」
 おかげでびしょ濡れだっての。
 愚痴りながら髪を絞る。鬱陶しげに首を振ると、絞りきれなかった水が跳ねた。
 その動きがあるのものを彷彿とさせて、ヴェイグは思わず笑う。それに目を瞠ったユーリに、慌てて謝罪した。
 いや、別に構わねえけど、
 なにがそんなに面白かったんだ?と尋ねるユーリにしばし逡巡し。
「・・・ザピィに、似ていたんだ」
 ザピィ。彼の幼なじみが飼っているマフマフの名、だっただろうか。
 つまり、動物のようだったと、そういうことか?
 言葉にはしなかったものの、どうやら表情には表れていたらしい。ヴェイグはすまない、と小さな声で再び謝った。
 苦笑を見せたユーリは、ふとその笑みを意地の悪いものに変える。
「・・・っ、ユー、リッ!」
「動物ならこのくらいのスキンシップはありだよな?」
 抗議するように名を呼ぶ、ヴェイグの朱に染まった顔を見やって。
 耳を食んだユーリが楽しげに笑った。

雨にしとどの笑み崩れ

  

  

片思いレベルだったのを恋人まで発展させたらこうなったw
前者にするとユーリさんが独白を始めるので←
そして最終的に暴走して終わります
わたしは状況説明で行を稼ごうとする性質があることに気づきました
本題だけ書こうとするとたぶん10行とかでオチるw←
とりあえずザピィかわいいよね、って話(え)
水も滴るいい男的なのを書こうと思ったけど恥ずかしいのでやめましたw←
ところでユーリさん公衆の面前だよ!www
101008