花氷*


 ヴェイグは眉を寄せて、目の前の男を見つめていた。
 ・・・どうしよう。思っても口には出さない。出したところで状況は変わらないから。
 なにに困っているかといえば、
「ヴェイグ?」
 聞き覚えのある声に振り向く。
 同じ制服に身を包んだ、赤茶の髪をした青年。スポーツバッグを肩にかけた彼は、道の真ん中に佇むヴェイグを不思議に思ったらしい。
 どうしたんだ?と首を傾げる。
「・・・アスベル」
 その名を呼んだヴェイグは、心なしか安心した顔を見せた。
 こんなに困ってるなんて珍しい。表情に乏しい彼が、ここまで困惑を見せているのだから。(ちなみにそれでもその表情が困惑だとわかるのはアスベルを含めた数人である)
 思ったアスベルに、ヴェイグは手短に訳を話した。
 外人に声をかけられたが、なにを言っているのかわからないんだ。
 つまりそう言うことらしい。
 外人に声をかけられて混乱する図、というのはよくあることだが、ヴェイグはそんなに英語が苦手だっただろうか。少なくとも授業で困っている様子はないのだが。
 アスベルはにこにこ笑っている外人に目をやって首を傾げる。
 そしてその口から飛び出した言葉に、目を瞠った。
「・・・え?」
「わからない、だろう?」
 ヴェイグが横から声をかけてくる。アスベルは誤魔化すように笑いながら、ヴェイグを見やった。
 ・・・これは、何語だ?
 どう考えても英語ではなかった。これではヴェイグが困っても仕方がない。それでも声をかけられた手前、無視するわけにはいかないと思ったのだろう。
 さあどうしようと考えて、答えはすぐに出る。相手には悪いが、こういうときの対処法は一つしかない。
 アスベルは一呼吸置くと、ヴェイグの手を取って走り出した。
「アスベル・・・っ!」
 困った色を乗せて名を呼んでくるヴェイグを今は無視する。やがて見えてきた校門に飛び込んで、ようやく足を止めた。
 乱れた息を整えて、外を窺う。
「アスベル・・・」
「あ、悪い。でもああいう場合はこうした方が・・・」
 いい、と断言するのはまずいだろうか。責任感の強いヴェイグのことだから、申し訳なく思っているかもしれない。
 そう思い至って言葉を失ったアスベルに、ヴェイグが口を開く。
「・・・ありがとう、助かった」
 浮かべられた微かな笑みに、目を奪われた。

鴃舌に微笑む

(そういえば、手をつないだまま)

  

  

気づいたらアス→ヴェイ?(笑)
現パロなのは外国語の概念がなかった・・・メルディがいた!←
ハーツ兄妹もありですね方言的な意味で。どっちもわたしには荷が重すぎますが
外人の方はたぶんジェイド先生とかがなんとかしてくれるよ!ということで
ヴェイグは結構英語苦手だと思う。アスベルも得意ではなさそうですが
ここから始まる青春ラブストーリー!みたいな?(嘘ですごめんなさい)
110423