花氷*


 世界を救う、なんて大それた話だ。そんな力があるわけでもなかったのに。
 ただヒューマでありながらフォルスが使える、それだけのこと。フォルスが使えないだけでよっぽどミルハウストの方が強いし、そういうことに相応しい。
「どうして、そう思う?」
 ぽつり、呟いたヴェイグは自らの手を見つめていた。
 ミルハウストは尋ねる。自分が相応しいとは思わなかったし、ヴェイグが相応しくないとも思わなかった。
 ヴェイグは顔を上げて、ミルハウストを見やる。
「お前はカレギアの民を守るために戦っている」
 だがオレには、そんな大きな志はない。世界を救うなんて、できるだろうか。
「ずいぶん弱気だな」
 ミルハウストは苦笑してヴェイグを見返した。
 その言葉どおりに、ヴェイグは見たこともないような顔をしていた。無表情な中で、揺れる瞳が雄弁に不安を語る。
 志がないことを気にしているのか。そう、かもしれない。ぽつりぽつりと会話を交わす。
 目の前のことを片づけてきた。ただそれだけだったのに。
「それなら、」
「?」
「それなら、誰かを選べばいい」
 ミルハウストの言葉に、ヴェイグは首を傾げる。
 誰かを、選ぶ?
「一人でなくとも構わない。誰かを、例えばクレアさんを守る」
 頷く。
 クレアを助けること、守ること。それがヴェイグが生きてきた意味。
「ならば、クレアさんが居る世界を守らなければ。そのためにユリスを倒す。これなら問題なかろう?」
 どうだ、と尋ねてくるミルハウストに、ヴェイグが目を瞬かせる。
 大切な人を守るために、大切な人がいる世界を守る。ミルハウストが言ったことは確かに本質で、ヴェイグの疑問を解消するもの。
 けれど。
「・・・お前がそんな風に思っているとは思わなかった」
「・・・心外だな」
 私はどう見られていたんだ?
 ヴェイグの言葉に眉を寄せて、ミルハウストは返す。不満げなその表情に、ヴェイグが小さく笑った。
 その笑みにミルハウストも表情を緩める。
「それなら、」
「ん?」
 ヴェイグの言葉にミルハウストは返す声をなくし。
 代わりに白いグローブに包まれた手が青を抱いた。

諸人ではなく唯の一人を

(オレは、お前のために戦おう)

  

  

ミルヴェイを書こうと思ったんだ
ユリスのところに行く前みたいな設定で書いたんだけど、そもそもミルハウストがいつから同行だったのか記憶が曖昧・・・←
ちょっとくらいの捏造は許されるよね、答えは聞いてない!(ひどい)
ミルハウストの持論はユーリが話してた気がするんだけど、ちょっと拝借
しかしヴェイグはクレアよりミルハウストを選んでくれるんだろうかwww←
そもそもヴェイグはそういうことに関してあんまり悩まないような気もするんだけど。目の前の敵を倒すのみ!みたいな
でもふとそういうことに気がついたらやっぱり不安になるのかなと思っています。そうであってほしい
最初はティトレイにしようと思ったんだけど全然キャラつかめなくて止めたなんて秘密←
ミルハウストもキャラ行方不明だけどな!
101220