ふわ、と柔らかな香りを感じて、ユーリは立ち止まる。
周囲は空と、地と、目の前に広がる森。町から離れて大分経つから、町の灯りは届いていない。夜の光は月と星だけである。
見渡してみても、変わったものは見えない。
香ったのは今まで感じたことのない香りで、けれど嫌なものではない。
「気のせい、か?」
呟いて、辺りを見回す。視界の端に、ゆらりと光が見えた気がしたからである。
その方向を見やっても、そこには真っ黒な闇が広がるばかり。森の中までは夜光は届かないらしい。
それでも諦める気にならずにユーリは目をこらし、そして再びその光を見つける。
やんわりとした光だ。例えるなら、蝋燭だろうか。
どうしたものかと数秒考え、
「行くか」
もう一度呟く。
その言葉が届いたかのように、ひらりと光が揺らめいた。
緩やかな点滅を繰り返す光を追って、ユーリは少しずつ森の奥へと進む。これに悪意があったらやばいな、なんて思いながら、その足が止まることはなかった。
しばらくその光を追い続けるうち、開けた場所に出る。この場所だけは木々がなく、月の明かりが届いていた。
暗闇に慣れていた分眩しく感じて目を細め、狭まった視界の先に揺れる光。
そして、その傍らに。
「・・・どうして連れてきたんだ」
『キミのためだろ?』
白銀の髪を持つ一人の青年が佇んでいた。
ユーリをちらりと見やってから、低い声が非難する。対して答えた声は飄々として、声と共に光がひらりひらりと揺らめいた。
その返答に彼は小さく溜息をつく。
月の光が青年を照らして、白銀の髪が煌めく。
その光景をぼんやりと眺めていたユーリは、彼の視線がこちらへ向いたのに気づいて我に返った。
「よぉ」
最低限の警戒はしつつ、軽い挨拶とともにユーリは青年に近づく。
目の前まで来ると、彼は困ったように眉を寄せた。ユーリはそれに気づかないフリをして、じっとその顔を見る。
ここまで近づいて、初めて彼の瞳が青いことに気づいた。
その色は、人ならざる者の証。
思わず目を見開いたユーリに、彼はやんわりと微笑んだ。
(その笑みは、まるですべてを受け入れているかのように儚げで)
若干シリアスになってしまった。もうちょっとふわっと終わるつもりだったんですが
わかると思ますが『』は火の玉(笑)です。せっかくだからサレ様をイメージ
ほんとはしゃべる予定じゃなかったんだけど勝手にしゃべり始めましたw
だからこうなったのか!←
瞳の色がどうとかっていうのはただの設定です。たぶん続かない
130218