Eisblumelein:


 ヴェイグが風邪を引いた。
 治癒術では風邪は治せない。これ以上酷くなるのも、他の仲間に移してしまうのも避けたい。
 そんなわけで、一行は大事を取って早めに宿を取ることにした。
「食べさせてやろうか?」
「・・・そんなに重症じゃない」
 食事を部屋に運んできたユーリが楽しそうに笑う。
 ただの風邪なのにベッドに押し込まれているヴェイグがむすっと返すのに、冗談だよ、と肩を竦めた。
 実を言えば熱は上がってきているのだが、先程計ったときは平熱だったし、わざわざ言ってまで心配をかける必要もないだろうと黙っていることにする。
 自力で起き上がって、受け取ったスプーンを握る。
 温かな湯気立つ料理は大変おいしそうなのだが、どうにも食べる気がしない。けれど、なぜかユーリがこっちをじっと見てくるため食べないわけにもいかなくて。
 ヴェイグは動かない手を動かして、食事をすることに専念する。
「食欲ない?」
「・・・いや」
 重症じゃないと言った手前もういらないとは言えない。そもそもわざわざ運んできてもらっているのに残すなんてできるはずもない。
 思って、ヴェイグは再びスプーンを動かし、・・・その手がユーリに握られた。
「っユーリ、?」
「残りはオレが食うから」
 もう寝ろ、と。
 スプーンを取られ、トレイを膝からのけられて、あれよという間に再びベッドに押し込まれた。
 重たくなってきた瞼をこじ開けて、手際よく片付けるユーリを見つめる。視線に気づいたユーリが、すっと手を伸ばした。
 髪に触れ、頬に触れて、小さく眉を寄せる。熱あんじゃねーか、とぼやくのが聞こえた。
「とにかく寝ろ。いいな?」
「・・・ああ」
 移してはいけないことは確かだからと、ヴェイグは素直に頷いた。
 よし、と満足げに言ったユーリがヴェイグの髪を撫でる。早く治せよ、なんて優しい言葉をかけられても、どう返せばいいのかわからないのに。
「それじゃ、おやすみ」
 離れていく手が名残惜しそうに見えたのは、きっと見間違いで。
 ぱたん、と静かに閉じられたドアを見やって、ヴェイグは目を閉じた。

立てば縋る哀れみの

(けれど、手を伸ばすことすらできない自分は、)

  

途中でなにを書いてるのかわからなくなった
テルカ・リュミレースにいるヴェイグさんは後ろ向きな傾向
ユーリさんがほっとけない病で分け隔て無く全方位イケメンなのがいけないw
ほんとはつきっきりでいたかったのよ、という裏設定が地味にあります
131202