殺したい、わけじゃない。
ただ、今の状態では、・・・こんなに腐った国では、正当な方法では悪人は裁けない。
だから、剣を振るうのだ。身を守るためではなく、裁くために。
「ユーリ」
剣を水流に当て、赤を洗い流す。暗がりでは見えないが、きっと水面を染めているのだろう。
見えない水を見ていると、後ろで、名を呼ぶ声がした。振り向かずともわかる。
異世界から来たという青年の声。
「・・・ヴェイグか。どした?」
背を向けたままで返す。ヴェイグは近づこうとはしなかった。近づかないでほしいという気持ちを察したのだろう。
ジュディにしろヴェイグにしろ、この年代は何かを悟ってでもいるのだろうか。
なんて、無理に軽口を叩いてみたりして。
「・・・なんでも、ないんだ」
暗がりを流れていく赤を見つめながら、ヴェイグの言葉を待つ。
なにを言われるかと思っていたら、予想外に話題も流されていった。思わず振り返り、ヴェイグを見やる。
なんだか、泣きそうな顔をしていると思った。
けれど目が合うと、ヴェイグはわずかに表情を緩める。
よかった、という小さな声が聞こえた。
「ヴェイグ?」
「先に休む。・・・おやすみ」
「そうか。おやすみ」
理由を尋ねようと名を呼ぶも、先手を打たれてしまった。
追求はやめて、素直に答える。
宿に戻る後ろ姿を見送って、知らず口元が緩んだ。そこでようやく、顔がこわばっていたことに気づく。
俺らしくねえな、なんて思って、溜息。
ぱしゃりとわざと水音を立てて、水中から剣を引き抜いた。
(彼にはどんな風に見えていたのだろう)
シリアスと見せかけてそうでもない
ラゴウさんあたりをイメージして書いてたけどわたしの中ではヴェイグまだ来てなかった!←
ヴェイグは何をしたかを薄々感づいているという設定
だから様子見に来て、顔見たら大丈夫だったから安心した、みたいな。わかりづらくてすみません
ユーリさん視点だけど三人称寄りというよくわからないものになった
130424