花氷*


 マスク・ド・カーボン。
 有名な英雄に会えると心躍らせていたリチャードは、全くの空振りに残念な表情を隠せなかった。アスベルやシェリアはおろか、ヒューバートにまで慰められる始末。
 それからフォドラの問題を解決し、公務に戻って数十日。ある日リチャードは公務を抜け出して、ライオットピークを訪れていた。
「番人が帰ってきたらしいですよ」
 フェンデルから来たマリクの言である。
 行くしかない、と一念発起して城を抜け出して。
 魔物をなぎ倒しながら英雄に思いを馳せる。どんな男なのだろうか。背は高いのか低いのか、肌は白いのか黒いのか。
 リチャードは階を制覇する度に上がる歓声も気にせず、次々と階を重ねていく。心ここにあらずで戦い抜けるほど簡単ではないはずなのだが。
 そんなこんなで最上階への昇降機に乗り込む。
 前はパスカルさんの妹がいたのだったな、なんて思いながら、
「・・・挑戦者か」
 ポワソンが立っていたところに佇んでいる人物に、リチャードは思わず目を奪われた。
 丁寧に編まれた長い銀髪と、澄んだ光を宿した青い瞳。その身体の線は思いの外細く、手にする武器はよほどその身体に似合わない大きなもの。
 リチャードは目を瞬かせて、
「貴方が、マスク・ド・カーボン?」
「・・・は?」

  

「・・・という、有名な英雄がいるんだ」
 なぜか戦うことなく腰を落ち着けているリチャードの話を、眉を寄せて聞く。話の流れで自分のことを教えることになったヴェイグは、内心首を傾げていた。
 おかしい。どうしてこうなっている。
 そんなヴェイグに気づくことなくマスク・ド・カーボンについて大いに語ったリチャードがようやく言葉を切った。それにしても、
「・・・なんだ?」
「マスク・ド・カーボンがこんなに美しい人だったとは・・・」
「・・・オレはマスク・ド・カーボンじゃない」
 それに別に美しくない。
 半ば投げやりに反論すると、リチャードは大げさに否定した。
 がっ、とヴェイグの両手を握る。整った顔がぐっと近づいて、ヴェイグは思わず息を飲んだ。
「僕はマスク・ド・カーボンに憧れていたのだけど、」

絵空事に焦がれていました

(君の方がずっと素敵だ)
(・・・なんなんだ、一体・・・)

  

  

わりとキャラ崩壊なリチャ→ヴェイ
陛下は天然と狙ってるところの境界が難しい。むしろヴェイグが天然なので別に照れたりしません(笑)
でもイケメンが近づいてきたらびっくりもするよね
リアラとコハクはきっとお買い物とか(適当)最終的にヴェイグを連れて行くには二人を倒さなければなりません
今のところアスベルさんにも達成できてないよ!(笑)
・・・しかしこの陛下マスク・ド・カーボンにこだわりすぎである
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