花氷*


 最近、ヴェイグが落ち込んでいる気がする。
 そう思ったのは、溜息の数が増えたからだった。
 原因はたぶん、サレだと思う。
「ヴェイグ!」
「・・・どうした、シング?」
 突撃する勢いで駆け寄るシングに、ヴェイグは目を瞬かせた。
 そんなヴェイグを食堂へ引きずって歩く。おい、という焦った声やら不思議そうに(または微笑ましそうに)二人を見やる仲間たちは無視しておいた。
 食堂についたら座らせて、シングはキッチンに入る。くすくす笑うクレアを怪訝そうに見つめているヴェイグのところに、シングが戻る。
 手にはトレイ、トレイの上には紅茶のポットとピーチパイ。
 バランスが悪いのかたまにポットが傾ぐのをなんとかなだめながらようやくテーブルに到着し安堵の溜息をついた。
「シング・・・?」
「いいから、ヴェイグは待っててよ!」
 宣言として、たどたどしい動きで紅茶をいれる。
 クレアは笑みを浮かべたまま動こうとしない。ヴェイグの方も、強く言われた手前手は出せなかった。
「よし!」
 さあどうぞ、とばかりに差し出されたカップとパイを見つめる。
 シングがうん、と満足そうに頷いた。少々歪んだピーチパイと、やや濃すぎる感のある紅茶。
「・・・いただきます」
 口に運び、咀嚼する瞬間までじいっと観察される。
 居心地の悪さを感じながら、ヴェイグはシングに答える。口にしてはいないが、その目はどう見えても感想を求めている。
「・・・うまい」
 ・・・と、思う。
 いつもより少し甘いピーチパイと、渋みが増した紅茶。
 ほんと!?よかった!
 シングはぱっと表情を輝かせる。
「元気になった?」
 目を瞬かせて、思わず頷く。なぜこのタイミングでその問いが出てくるのかわからなかった。
 再びキッチンに向かったシングを見送っていると、クレアが隣に座った。
「全部、シングが作ったのよ」
 ヴェイグに元気になってほしいって。
 ふふ、と笑みをもらしたクレアが、シングが戻るのに合わせて立ち上がる。
 自分の分を用意して向かいに座ったシングに、ヴェイグは笑みを浮かべて。
「シング」
「なに?」
「・・・ありがとう」
 シングが大きく頷いて、笑った。

其処で笑って居て下さい

(そのためなら、なんだってしてみせる!)

  

  

慣れないこともがんばったよ、なシング
いろいろと無理があるけど気にしたら負けです←
一応本編のサレが終わった後
シングの口調がいまいちはっきりしない。こんなに子供っぽくないような
シンヴェイのつもりなんだけどお兄ちゃんを心配する弟みたいですね
111004

というのをようやく発見したので更新。文章が若干あれだけど直すだけの能力もなかったです←
131231