花氷*


 雨が窓を叩く音がする。
 今朝から降り出した雨はその勢いを強め、昼を過ぎた今では雨粒で外も見えないほどだ。普段ならこの時間帯は灯りをつける必要がないのだが、今日は邸全体に灯りが点っている。
 ヴェイグは窓の外をちらりと見やり、それから部屋の中を見やった。
 ベッドに腰掛けて、ソフィが本を読んでいる。けれど集中できないらしく、足をぱたぱたと揺らしたり読んだはずのページに戻ってみたりと落ち着かない。
 理由はわかっている。花壇のことが心配なのだろう。
「雨、止むかな?」
 視線に気づいたソフィが顔を上げ、ヴェイグに向かって首を傾げる。こくりと頷いてみせてから、ヴェイグは部屋を出た。
 かつかつと階段を降りている最中に、大きな音。
 入り口の扉の上部に取り付けられた明かり取りの大きな窓の先で、強い光が輝いた。
 それからいくらもしない内に、邸内が真っ暗になる。突然のことに驚いたメイドの短い悲鳴が聞こえた。
 ヴェイグは感覚を頼りに階段を降り、執務室の扉を開ける。
「アスベル、大丈夫か・・・!?」
 執務机に座っているアスベルが、扉が開いた音に顔を上げた。
 それと同時に、再び閃光。窓の外に稲妻が光り、部屋を強く照らす。
 その光景に、ヴェイグは思わず言葉を失くした。
「ああ、点いたみたいだな。・・・ヴェイグ?」
 再び暗闇になったかと思うと、少しして灯りが点った。どうやら復旧したらしい。
 アスベルが独り言のように呟いて、それから入り口で立ちつくしているヴェイグに声をかける。
 は、と我に返ったヴェイグがアスベルに歩み寄り、その腕を掴んだ。突然の行動に目を瞬いているアスベルを立ち上がらせ、腕を引いて歩き出す。
 ヴェイグ?と名を呼んだアスベルにヴェイグが振り返り、
「・・・食事をしろ」
食べていないだろう、という言外に込められた意味に、アスベルは思わず目をそらす。
 確かに最近は忙しくて、まともに食事を取っていなかった。フレデリックにだけは話しておいたが、他には誰にも話さなかったし、誰も気づかなかったのに。
 責めるような視線をひしひしと感じて、アスベルは言葉を探す。
 気づくとは思わなかった。そこには申し訳ない気持ちと、それから、
「ありがとう」
「・・・なんで礼を言うんだ」
「気づいてくれて嬉しかったからだよ」
 怒られているはずなのに笑ったアスベルに、ヴェイグは呆れたように溜息をついた。

稲妻に頤、知らされた白さ

(一緒に昼食に行こうか)
(・・・ああ)

  

  

ヴェイグは設定としてそこまで色白なわけじゃないので難しい
というわけでアスベルさん@不健康
ただラント家はすごく健康に気を遣ってそうだから忙しくてもご飯は食べそうな感じがします
若干察して文になってるけどまあいいか
ソフィは小さいままになってます都合上(笑)
あ、あとエレスなのに停電とかあんのかよ的なつっこみはなしの方向でお願いしますw
130618