花氷*


 会いに行くのは、いつも決まって夜だった。
 片や下町の一般人。片や貴族街の豪邸に住むいわば殿上人。ヴェイグは囲われている身だから、正確に言えば一般人なのだが。
 シュヴァーン的には引き取った、が正しい表現なのだが、残念ながらそれが他人に理解されることはない。
「青年、最近ヴェイグちゃんとはどうなのよ?」
「・・・アンタこそ仕事してんのかよ・・・」
 そのシュヴァーン・・・もといレイヴンがひょいっと下町に顔を覗かせる。
 ユーリにだけ正体を明かした貴族の男は、変わらず下町に現れていた。昼日中だというのに、一体いつ仕事をしているのだろうか。・・・と、話をそらすように動いたのは、あまり聞きたくない言葉だったからである。
 聞きたくないというか、答えたくないというか。 「ぼちぼちよ。・・・で、どうなのよ?」
 しかしまあ、簡単にはぐらかせるような相手ではないわけだが。
 さらりと流して再び話題を戻してきたレイヴンにユーリは溜息をついて。
「真っ昼間からお貴族様の家に行くわけにはいかねぇだろうよ」
 夜は夜で、そんなに時間を取らせるわけにもいかない。
 いくら主公認とはいえ、下町の住人が貴族街に行くのも何となく後ろめたいし。
 ユーリといえども、身分制度は身分制度なのだ。それに、もしもばれればユーリだけでなくヴェイグにも・・・シュヴァーンにも迷惑がかかるだろうし。
 ・・・なんてことを洗いざらい話してしまう。なんだかんだで相談できるのはレイヴンくらいなのだ、仕方ない。
 そして話を一通り聞いたレイヴンは、らしくないわねぇ、と開口一番に言った。
 自覚はしている。いつもの自分なら、こんなに悩んだりはしないだろう。
 心なしか不機嫌になっているユーリに、レイヴンは大仰に溜息をつく。
「仕方ないから、とっときの情報教えてあげるわよ」
「なんだよ」
 どうせろくなもんじゃないだろうと予想して、先を促す。
 けれどもたらされた情報に、すぐに踵を返した。黒い姿が下町を駆け抜けていく。
 それを見送ったレイヴンは、いつになく穏やかな顔をしていた。

夜を待たず駆け行けば

(ヴェイグちゃんね、青年に会えるの楽しみにしてるわよ)

  

  

和風舞姫パロの続き
ぶっちゃけオチとか考えてなくて(いつものこと)
レイヴンはこう、二人を応援しつつ若干青年この野郎みたいな気もしつつ(笑)
ヴェイグに幸せになってほしいが一番かなと。レイヴンはおっさんだけどシュヴァーンはお父さん
・・・しかしこのサイトレイヴンが活躍しすぎであるw
130917