花氷*


 ヒュン、と風を切る音がする。
 ヴェイグは頭を下げるだけでそれを避け、手にした大剣に力を込める。槍を返す時間を利用して距離を詰め、下から剣を振るった。
「おっと」
 小さな呟きが聞こえたと同時に視界に刃。
 後方に跳び、距離をとる。それから、しまったと思った。
 いつのまにか姿を消した槍の代わりに、足下に符陣が描かれる。認識してすぐに、目の前で光が弾けた。
 それを身体を捻って避けたのも束の間、再びの風を切る音。先程と違うのは、首筋に添えられた刃と宙を舞う数本の髪。
「私の勝ちですね」
「・・・ああ」
 蜂蜜色の髪を持った男がにこりと笑う。
 ヴェイグが答えると同時に、首筋の感触がなくなった。知らず詰めていた息を吐く。殺されることはないとわかっていても緊張はするものらしい。
 距離を空けたのが勝敗を分けたか、などと先程の動きを思い返していると、目の前に手が伸びてくる。
「・・・っなんだ?」
「いえ、申し訳ないことをしたと思いまして」
 ジェイドが言って、髪に触れる。
 どうやら髪を切ってしまったことを言っているらしい。切った、といってもたかが数本。見た目にもほとんど変わりはない。
「別に、構わない」
 そもそもヴェイグは別に髪に頓着していないのだが。
 伸ばしているのも切る頻度を考えてのことだし、後ろで三つ編みを作っているのも一番動きやすいからに他ならない。
 だから別に、切れてしまったのならそれでいい。
「残念ですが、貴方がよくても私がよくないのですよ」
 そんなことを言われても、という視線がジェイドに向かう。ジェイドは再び笑みを浮かべて見せた。
 だって、
「貴方は私のものですから」
 自分のものを傷つけられたら嫌でしょう?それが自分だとしても。
 さらりと言ってのけたジェイドに、ヴェイグが言葉を失くす。
 俯きがちな顔を上げさせたジェイドが、うっすら上気した頬を見つける。
 わかっているだろうにおや、と意外そうな声を上げて、ジェイドはその頬に唇を落とした。

穂先に裂かれ散った華

(赤くなっているのもなかなかそそりますねぇ)
(・・・っ!)

  

  

穂先っていうと槍かなっていう単純な考えの元大佐。華=ヴェイグ(髪)的な
珍しくちゃんと恋人的な雰囲気になってました。さすが大佐!←
なにが問題ってヴェイグ相手だと大佐があんまり鬼畜眼鏡にならないことだよね
いじわる難しいっていうかいじわるに対するヴェイグの反応が難しい
とりあえず大佐は無駄に強いと思います。控え選手な関係でレベルが70止まりでも!(笑)
110630