花氷*


 ・・・ッキー、とどこからか鳴き声がして、ヴェイグは立ち止まった。
 なぜか並んでいる木箱の間からなにかが飛び出してくる。
 胸に飛び込んできた生き物をとっさに受け止めて、ヴェイグはどうした、と声をかけた。
「クィ、クィッキー!」
 嬉しそうに鳴いているのは、同じ船に乗る少女が連れているペット。
 種族は不明だが、ユーリが話していたラピードと同じようなものだとヴェイグは思っている。
 クィッキーと鳴くし、飼い主であるメルディがクィッキーと呼ぶからクィッキーなのだ。気にしたら負けである。
「・・・オレは今なにも持っていないぞ?」
 ごろごろと懐いているクィッキーに、ヴェイグはそう告げた。
 なにかしら持っていると与えているから、持っていると思って来たのではないか。そう思って。
 けれど言葉が理解できるらしいクィッキーがふるふると首を振る動作を見せた。どうやら食べ物目当てではないらしい。
「ヴェイグ?どうした?」
 それならなぜ、と難しい顔をしているヴェイグに、通りすがりのユーリが声をかける。
 食べ物を求めたわけではないのに、どうしてこいつがオレのところにきたのか、考えていたんだ。
 肩に乗るクィッキーを撫でながら、ヴェイグが告げる。
 ユーリは幾度か目を瞬かせてから、
「そんなの、そいつがお前を好きだからに決まってるだろ?」
「・・・好き?」
 当然だろ?とユーリがクィッキーを見る。
 つられるように肩を見やるとクィッキーがくるりと回った。
 クィ、と鳴いて、肯定を示す。
「・・・そうか」
 やがてそう呟いたヴェイグがふわりと笑う。
 それを見たユーリが声を詰まらせた。
「どうした?」
「や、なんでも。行こうぜ」
 行く?どこにだ?と小さく首を傾げたヴェイグを適当に言いくるめる。
 前述したように、ユーリはただ通りがかっただけだ。けれども、こんな表情をしているヴェイグを一人置いていくわけにはいかない。
 ・・・なんてことを考えているかは定かではないが、ユーリはヴェイグの手を取った。
 ヴェイグはされるがままに手を引かれながら、一声鳴いてするすると腕を降りていくクィッキーを見やった。

懐く理由

(ああ、そうだ)
(?)
(言わなくてもわかると思うけど、オレも好きだぜ?)
(・・・っ知っている)
(そりゃあよかった)

  

  

クィッキーは実に空気の読める子である(笑)
でも口調がよくわからない
もとは拍手文になるはずだったもの。なのでちょっと短めです
ユリヴェイ未満な気もすると思ってたんだけど最後でユーリさんがちょっと暴走した
でもユーリさんは大人なのでクィッキーにぺっていうことはありませんwたぶん←
最後のユーリさんはすごく満足げだと思います(笑)
111209