花氷*


 チャイムが鳴ると同時に、一斉にペンを置く音が重なった。
 それからすぐに緊張の糸が緩む溜息。時計の音とペンが滑る音だけが支配していた教室に、ざわめきと教師の声が広がる。
 それを聞きながら、ヴェイグは残された問題用紙を見やった。
 どうしてもわからない問題があったのだ。今眺めても、やっぱりわからない。
「どうだった?」
 試験期間の席順ですぐ前にいるアスベルが振り返る。
 じっと問題を見ているヴェイグを見てある程度は察したけれど。
「・・・すまない」
 せっかく教えてもらったのに
 ヴェイグの言葉にアスベルはやっぱりな、なんて内心思って、それから笑った。
 ヴェイグは一通り度の教科もできる方だ。けれど、化学だけは苦手だった。逆に得意なのがアスベルで。試験にあたって教えを乞いていたというわけだ。
「そんなの気にするなよ」
「だが・・・っ!」
 なおも言い募ろうとするヴェイグの額を軽く弾く。
 一瞬顔をゆがめたヴェイグを笑って見ながら、アスベルは再び口を開いた。
「オレだってヴェイグに古典教えてもらったろ?おあいこだよ」
 アスベルは古典が苦手で、教えてもらったけれどどうしても解けない問題があった。今日のヴェイグと同じ。
 勉強したからといって全部が完璧になるわけではないし、しなくてもできてしまうこともある。
 だから別にヴェイグが悪いわけではない、のだが。これは一筋縄ではいかなそうである。
 でも、なんて反論しようとするヴェイグを見ながら、アスベルは内心考えて。
 ぽん、と大げさに手を叩いた。
「じゃ、デートしよう」
「・・・?」
「デート一回、な?」
 突然の申し出によくわかっていない様子のヴェイグにもう一度念を押す。
 こくり、と頷いたヴェイグに、アスベルはよし、と満足げな声を上げた。

勉強のお礼に

(なんだか嫌な予感に、残りの二人が寄ってくるのはもうすぐ)

  

  

試験が終わった記念に
最後の試験の形式が懐かしの問題用紙+答案用紙だったので問題用紙の裏にがりがりと。テンション上がるよねなんか(笑)
どうしようかと思った結果アスヴェイになりました。席順は日本式にファミリーネームで。LhantとLungbergでたぶんセーフかと
書いてる間にユーリさん出てきそうになったけど帰っていただきましたw
得意教科とかはイメージというか完全なるわたしの好みです
130713