花氷*


 Sクラスのユーリ・ローウェルが、Bクラスの作曲家にラブコールを送ったらしい。
 そんな噂が学校中を駆け巡るのに、大した時間はかからなかった。人の口に戸は立てられないとはいうが、その格言を身に染みて感じているのが、件のBクラスの作曲家である。
 噂は確かに真実である。あくまでも根本は、だが。
「迫ったのはお前だって言われてるぞ」
 気づけば噂には尾ヒレだか背ビレだか胸ビレだかがついて、実は弱みを握られているだとか、小さい頃からの腐れ縁だとか、はたまた身体を売っただとか。
 なんというか、自分はとりあえず置いておくとしても、ユーリをもけなしていることがわからないのだろうか。
「・・・そんなことをすると思うのか?」
「思うわけないだろ」
 ヴェイグは頭の痛い状況に溜息をついてから、前の席のセネルを睨んだ。
 そういう噂もあるって言いたかっただけだ、とセネルはあっさり返す。
 そもそもいつ情報が流れたのかもわからない。ヴェイグは数人の友人にしか話していないし、彼らが噂をばらまくような人間ではないと知っている。
 ユーリの方は知らないが、わざわざ吹聴することでもないだろう。
「ま、しばらくはうるさいだろうが、すぐ治まるよ」
 セネルがそういう間にも、Bクラスの入口には人だかりができている。
 名前がバレていないのが唯一の救いか。
 Bクラスのクラスメートたちはずいぶん協力的かつ仲良しで、ヴェイグがその作曲家と知って誤魔化すのに協力してくれている。クラス内では誰もその話を振らないし、他クラスの追求も受け流してくれているようだ。
 あとはもう、ユーリ・ローウェル本人がおかしな行動を起こさないのを祈るばかりである。
「ふう・・・」
 ちらと入口の人だかりに視線をやって、改めて事態の大きさを認識する。もう一度溜息をつくと、セネルが苦笑した。
 それから、
「収拾する方法がなくもないな」
「本当か?」
 あぁ、と頷く。
 ヴェイグとしては静かに学生生活を送るのが一番なわけで。
 なぜか嬉しそうな顔をしているセネルの案を聞いて、ヴェイグじゃ再び頭を抱えたくなった。

予想外の事態

(俺とパートナーになればいい)
(・・・そういうことではないだろう・・・)

  

  

うたプリパロの続き
なんとなくセネルさん@アイドルコース。ユーリ→ヴェイグ←セネル的な感じで
当初ユーリさんががっかりになるところだったんだけど、長くなりそうなのでやめました
なんでセネルさんかというとたぶん兄弟衝突のせい←
131010