Eisblumelein:


「ヴェイグ、なにしてるの?」
 バンエルティア号の甲板に出たマオは、なにをするでもなく佇んでいるヴェイグを見つける。
 この場所を定位置にしているセルシウスがディセンダーと共に出かけているため、この場にはヴェイグしかいなかった。セルシウスとヴェイグは同じ氷を使うことで通ずるところがあるのか、意外にも仲が良かったりするのだが。
 セルシウスも不在となると特にこの場にいる理由が見つからない。
「マオ」
 ディセンダーが外出中のため出港することもないバンエルティア号は、港代わりの岸辺に船をつけたままだ。
 つまり景色が動くこともなく、気分転換、という線も薄い。
 問いながら近づくと、ヴェイグがマオへと視線を移した。
「何か見えるの?」
「・・・いや」
 ヴェイグが見ていた方を見ても、そこには陸地が広がっているだけだ。
 近くに町があるわけでもないし、町があったとしても見ていて面白いものではない。ヴェイグもヴェイグで否定を示すから、ますますわからない。
 マオは目を凝らして何もない陸地を見つめる。やっぱりなにも見つけられないでいると、ヴェイグが小さく呟いた。
「・・・ユーリを」
「ああ」
 皆まで言う前に、マオは相槌を打つ。なるほどね、と続けて、思わず笑った。
 ディセンダーが連れて行ったのはセルシウスと、ユーリ。
 ここからは視認できないけれど、ヴェイグが見ていた方角は、彼らの目的地の洞窟がある方向だ。
「・・・ヴェイグって、ほんとにユーリのこと好きだよね」
「・・・・」
 いつもより少し長い沈黙は、肯定の印。
 わずかに目をそらしたヴェイグの反応を見て、マオはまた笑う。
 からかったりしているわけではなくて、ただ単純に、嬉しい。
 村にいたときから、ヴェイグはあまり心を開かないところがあった。もちろんマオやティトレイ、それからクレアたち。みんなのことを信頼しているし、他の人に比べれば心を開いてくれていたんだろう。けれど、どこか負い目のようなものを持っていたように見えた。
 それがもどかしくて、けれど自分たちではどうしようもないと思っていた。
 だけどこの船に来て、いろんなことがあったけれど、ヴェイグは確実にみんなに心を開くようになっていて。
 それはきっと、ユーリのおかげだと。悔しいけれど、ユーリがいたから今のヴェイグが笑っていられるのだと、わかるから。
「ね、ボクも一緒に待っていい?」
「・・・ああ」
 構わない、と。頷いたヴェイグにくっついて、マオはいつ戻るか知れない一向の帰りを待った。

 帰ってきたユーリが、身体を預けあって眠っている二人を見るまで、あと少し。

おかえりが言いたくて

(・・・なにこれ天使か)
(ユーリ、キャラがブレてる)

  

キリ番のリクエストでした
ユリヴェイとマオというお話だったのですが、ヴェイグとマオにユーリが香ってるみたいな結果に
マオの扱いがわたしの中で若干固まってないのが原因かもしれないです
ヴェイグは渡さない!っていうのと二人とも好き!な息子ポジションとで迷って間をとったらこんなことになりました
ぶっちゃけやりたかったのはなにこれ天使かでした(笑)
キャラ崩壊ごめんなさい

というわけで遅くなりましたすみません・・・!
書き直しなどありましたら仰ってくださいませ。ありがとうございました!
140818