Eisblumelein:


「あれ、ヴェイグだけ・・・?」
 ひょい、と覗き込んだ先にいると思っていた影が一つしかなく、ルドガーは首を傾げる。
 別にこれといって用事があったというわけでもなく、ただ二人でいるのが当たり前のように思っていただけなのだが。二人とて四六時中隣り合っていることもないだろうに、いつの間にか定着してしまっていた。
 ヴェイグの座るテーブルに向かいつつ珍しいな、と思いながら視線を流した先に、他の人の姿もない。
 どうやら本当に一人らしい。
「・・・・るどがー?」
 ゆっくりとこちらを向いたヴェイグのとろりとした声に、ルドガーは動きを止める。
 今のは、なんだ。どう考えてもいつものヴェイグではない。思わずえ、と声を漏らし、それからヴェイグを見やった。
 入口からでは見えなかったヴェイグの表情は常になく柔らかい。きりっとしているはずの目尻は心なしか下がっているし、目も潤んでいるし、頬は上気してほんのり赤みを帯びているし、口元には笑みまで浮かべている。
 そこまで確認してルドガーはぎこちなく目を逸らすと、テーブルを見やった。
 ヴェイグのことだからコーヒーか紅茶か、もしかしたら好物のピーチパイなんかが乗っているのだろうと思い込んでいたそこに鎮座しているのは、小さめの瓶が一本。
 女性に支持を受けそうなおしゃれな瓶はピンク色を基調とした色合いでデザインされていて、モチーフとして散りばめられているのはデザイン性を高めたある果物。桃である。
 それだけなら桃のジュースでも出たのだろうかと思うところだが、この状況でそう思えるほどルドガーは楽観的ではなかった。
「・・・酒・・・」
 嫌な予感がじわじわと背中を這い登るのを感じながらゆっくりと指を伸ばしてくるりと瓶を回すと、思ったとおりにアルコールを示す表示が飛び込んできた。
 的中、なんて心の中で呟いて、瓶から手を放す。
 おそらくヴェイグは、これが酒だということを知らなかった。偶然か必然かはわからないがこの瓶はヴェイグの手に渡り、ジュースだと勘違いして飲んでしまったのだろう。
 この場に誰もいないのは幸か不幸か。
「るどがー・・・」
「はいっ!」
 これからどうしようか、とりあえず水でも飲ませて部屋まで運ぶか、それとも彼を呼んでこようか、いやでも呼びに行く間に何かあっては困るし・・・。
 さりげなく瓶をヴェイグから遠ざけながら考えていたルドガーは、ヴェイグの声に動揺して思わず返事を正す。ばっとヴェイグに視線を戻すと、不満げに唇を引き結ぶヴェイグの姿があった。
 一瞬瓶を取り上げられたせいかと思ったが、残念ながらあの瓶は空っぽだった。となれば、ルドガーが上の空なのが気に入らなかった、のだろう。
「ん、」
 ルドガーの意識が自分に向いたことで満足したのか、ヴェイグは頷いてふわりと笑みを零した。
 ふわりどころか、へにゃりだろうか。あまりにも普段の彼とかけ離れているから、動揺を隠せない。
「ヴェイグ、部屋に行こう!ほら、立てるか?」
 とりあえずここにいてはいけない気がする。こんなところで二人きりはダメだ。いろんな意味で危ない。
 潤んだ瞳に目を奪われていたルドガーは首を振って気を取り直し、ヴェイグの肩に手を置いた。
 声をかけながら立ち上がらせると、抵抗もなく立ち上がってくれる。素直でよかった、なんて思っていると、突然首元に手が伸びてきた。
「うわっ」
「るどがー、あったかい」
 ぽつりと呟いたヴェイグの腕がそのまま首に絡んで、若干不安定な身体が寄りかかり。
 肩口に預けた頬ですり、と懐かれれば、思考がショートするのも時間の問題だった。
 この距離まで近づけば香るアルコールのせいだとわかっているのに、いつもとのギャップがありすぎて、
「さて、なにしてくれてんのかな、ルドガーさんよ?」
 気づいたら腰に回していた腕に思わず力を入れていたルドガーが、どこからか聞こえた声にぴたりと動きを止めた。
 そして同時に我に返る。どこからかもなにも入口からなのだが、気配を感じる暇もなかった。
 ああヤバい、しばらく医務室生活かもしれない、なんて遠く思うルドガーの腕の中で、ヴェイグがすこやかな寝息を立てていた。

無自覚な誘惑

(ユーリ、落ち着け!で、ちょっとでいいから話を聞いてくれないか?)
(いいぜ。俺の気が済んでからな?)
(だから誤解なんだって・・・!)

  

ユリヴェイ前提の酔っ払いヴェイグと巻き込まれルドガー
思いついたのが深夜だったのでいろんな意味で深夜テンションでした(笑)
久々にTOX2をプレイしててルドガー喋ってるので雰囲気でルドガー
選択肢だけ喋ってもな・・・って思いつつも選択肢だけなのに思ってたのと表現違ったりしててやっぱり声って大事だなって思ったり思わなかったり
そういうわけでルドガーって二週目から光る系キャラなんだなって一週目そんなに好感度の高くなかったわたしが言ってみる
ヴェイグさんの崩壊加減はあれだけどディールの陛下見てるとなんでもありなのかなって←
ていうかこのままルドヴェイにしてしまってもよかったかなって書きながら思うくらいにはルドガーが最近好きです
でもそれはユーリさんが許してくれませんでした
世界観はたぶんマイソロにぶっこんでる感じだと思います。深く考えたら負け!
140928