冬の只中。地方によっては毎日のように雪が降るこの時期。
この辺りでは条件が重ならない限り雪は降らないし、季節柄天気のいい日も多い。が、空気は乾燥しているし風は冷たいしでなかなか身体には堪える。
そんな季節に、
「こんだけ待たせるってどういうことだよ・・・」
北風をまた一つ浴びながら、ユーリは低い声で呟いた。
遅れるから待っていてくれと連絡を受けたのはもう30分も前で、そもそもの待ち合わせの時間は1時間も前である。
全うな理由での遅刻で、連絡もあった。そうでなければさっさと帰っているのだが、待っていると返した以上待たないわけにもいかない。追加の連絡でもあれば話はまた変わるのだが、ポケットからは未だなんの反応もない。
溜息も白く凍り付いていて、それもまた憂鬱な気分にさせた。
ちりん
「ん?」
どこからか鈴の転がるような音が聞こえた気がして、ユーリは顔を上げる。
ちりん
気のせいではないらしい。
再び耳に届いた音に、辺りを見回す。誘うように音が鳴り、その先に梅の木を見つける。今までずっとこの場所にいたというのに、今の今まで気づかなかった。
けれどユーリが見入ったのは寒さに負けず咲く小さな花ではなく、その下に佇む人影だった。
微動だにせず、花を見上げている青年。時折吹く北風が、腰についている飾りの鈴を鳴らしている。ユーリ聞いたのはその音だったらしい。
じっと細い木を見つめている青年は、こちらに気づいている様子はない。その横顔はひどく真剣で、切なげで。ふと、前に聞いた歌を思い出す。
古い時代に、遊女が唄ったという恋の歌。慕わしい人が再び会いに来るのを待つ、あの唄。
彼も恋をしているのだろうか。女たちのように、叶わぬ誰かに。
そう思ったら、無性に声を上げたくなった。梅ではなく、桜を見せてやりたくて。
「なぁ、・・・っ!」
ひとつ息を吸って、声をかける。梅の木の元で青年が振り返る。
しかしその瞬間に強い風が吹いて、ユーリは思わず眼を細め。
風が収まって眼を開けた頃には、その青年は姿を消していた。残るのは自分と、ぽつりと花を咲かせる梅だけで。
まさか寒さが見せた幻か、なんてらしくないことを考える。
「ユーリ!悪い、遅くなった!」
「・・・フレン・・・おせーよ。帰るところだったぜ」
走ってきたらしい親友に軽口を返しながらも、ユーリの頭の中からあの青年の姿が消えることはなかった。
(一瞬、目が合った気がした)
(あのとき、あいつはひどく驚いた顔をしたんだ)
桜はまだかいな、ということで
お久しぶりにもほどがある感じになってますが。お久しぶりです
ちょこちょこ書いてはいるんだけど書きあがらないまま追いやられていく文章の数よ・・・←
梅が咲いてる!ってなった勢いでした。おかげでバレンタインのことは頭から吹き飛びましたw
元の小唄?長唄?の意味を調べると若干違うけど、雰囲気で読んでくださいという軽い気持ちです←
時代物からの転生パロみたいなパロにパロを重ねるという所業です
ヴェイグが遊女的な感じでそこに通ってるユーリさんみたいな設定。で、結局その時代に結ばれることはなくて、というありがちなry
転生してユーリさんには記憶がなくて、ヴェイグには記憶があって・・・というパターン。か、またはヴェイグは転生してなくてほんとに梅の木の傍に留まってる幽霊的な存在でもいい
けどこのあと続く予定はない←
そして最終的にまだかいなどころかもうすぐ桜!みたいなレベルになってきてますがまだ咲いてるからセーフ!(じゃない)
170312