Eisblumelein:


「ヴェイグ!」
 スライド式のドアを勢いよく開けて、ティトレイが一番に保健室に飛び込む。
 派手な音を立てて反対側にぶつかったドアが勢いを殺しきれずに戻ってきた。この勢いだともう一度閉まって再び開くくらいはするんじゃないだろうか。
 そうならないように途中で手で押さえたセネルが溜息をついた。オレはそれに続いて入って、静かにドアを閉める。
 振り返ると、ティトレイがすごい目で睨まれていた。
「静かにしてくれ」
「す、すいません・・・」
 思わず謝ってしまってから、オレじゃないよな、と思った。
 セネルが隣で呆れている。ティトレイ本人はそんなことお構いなしに、保健医に詰め寄った。
 ヴェイグの様子は!?
「・・・寝てるよ。君の声で起きたかもしれないが」
 その低い声に、ようやく怒られていたことに気づいたらしい。ごめんなさい、と小さく呟く。
 先生は溜息をついて、白いカーテンに区切られた窓際のベッドを示した。
 セネルがさっさと近づいて、わずかにカーテンを開ける。大丈夫か、と尋ねる声が聞こえたから、たぶん目が覚めているんだろう。
 たぶん、ティトレイが起こした。あの声の大きさだ、起きないはずがない。
 セネルがカーテンを引いて、オレたちはベッドに近づく。身体を起こしたヴェイグが、バツの悪そうな顔をしていた。
「ヴェイグ!大丈夫か?」
「どうしてそんなになるまで黙ってたんだ」
「・・・すまない」
 その言葉は、きっとわざわざ心配させてしまって、という類のものなんだろう。
 オレたちが言いたいのはそういうことじゃないのに。後ろで先生も苦笑していた。
 どうやったら伝わるのか、難しい。ヴェイグは遠慮しすぎなのだ。
 この辺は直球で話すティトレイに任せるしかないかもしれない。オレやセネルには荷が重い。
「心配するのは当たり前だろ!オレとヴェイグは親友なんだからな」
『ちょっと待て』
 思わずセネルと声が被った。
 ん?なんだよ?
 なんてティトレイが首を傾げる。まったくの無意識みたいだ。
「おまえだけじゃないだろ」
 オレたちだってヴェイグの親友だ。そこを譲る気はない。
 セネルのつっこみに、ティトレイは今思いついたかのような顔をする。
 本当に気づいて・・・いなかったんだろうなぁ・・・。
 そんなオレたちの会話を聞いていたヴェイグが小さく笑った。
「そろそろ下校だよ」
 そこにかかった先生の声。
 振り返ると、苦笑気味の先生が時計を示していた。
「ヴェイグはもう少し寝ているといい。ユーリが来てくれるはずだから」
「・・・はい」
「え」
 素直に頷いたヴェイグと違って、オレたちは首を傾げるばかりだった。

保健室

(まあ、あんまり調子が悪いわけでもなかったからいい、のか・・・?)

  

保健室の先生=フレン。なんとなくイメージで
名前出てないけどこういう状況でユーリさんをさくっと呼び捨てにできるのはフレンくらいだよね!
そしてあれ、結局ユリヴェイ←
111017