「・・・とにかくここから離れるぞ。話は後だ」
されるがままに腕を引かれて裏路地を出る。空と同じ色の裾がふわりと翻った。
細い路地を抜け、大通りへと移動しても、ユーリは口を開かなかった。
呆れているのだろうか。舌打ちをしていたから、きっと気に障ったのだろう。わざわざ助けにきてくれたのに、そこであんなことを言ったのだ。もうつき合っていられないと思ったはずだ。
それでもこうして共に歩いているのは、ユーリの性格なのだろう。船まではつれて帰ってくれるのかもしれない。
放置してなにかあっては後味が悪いだろうから。
「部屋は空いてるか」
「・・・え?」
予想は外れて、二人は宿屋に直行した。我に返ったときには、既に鍵を受け取っているユーリの姿。
いつのまにか手続きは終えられて、ユーリは再びヴェイグの腕を引いて階段を上った。
部屋に入り、ご丁寧に鍵までかけてからドアにもたれ掛かる。まるで逃げることは許さないと言っているようだった。
「ユーリ、」
不自然な沈黙を破ろうと試みる。けれど帰ってくるのは無言ばかりで。
世間話をするような雰囲気でもなければ、そんな気の利いたことをいえる性格でもない。ヴェイグは部屋の中央で所在無げに佇む。
それを見ていたユーリが端的に座れ、と指示した。
二つ並んだベッドの窓側に、ヴェイグは静かに腰を下ろす。
「で、だ」
溜息をついたユーリが反対側のベッドに腰掛け、ヴェイグと向かい合った。黒い双眸がヴェイグを見つめる。
なぜ逃げた、と。口にしなくともその目がそう告げていた。
逃げた。ああ、そうなのかもしれない。
たぶん、答えを聞くのが嫌だったのだ。帰れとは言ったけれど、そこでそうだな、という肯定の言葉は聞きたくなかった。
だから、逃げた。
「・・・わからない」
わかったからといってそれを素直に言うべきかといえば、答えは否。
今現在が女であろうとも、元は男なのだ。このまま戻らない可能性もゼロでないとはいえ、これが薬の仕業ならば、効果が切れれば戻ると考えるのが道理。
否定がほしかったなどとは言えない。そんな感情はおかしい。
「わからない、ねえ」
ユーリは鸚鵡返しに言って、薄青い瞳を見つめる。
揺れているのがわかったのだろうか。溜息をついて、それからユーリは両手でヴェイグの顔を挟んだ。
ぐい、と顔を寄せて、とりあえずそれを答えにしておいてやる、と前置き。
「オレは元からお前といるつもりだった。エステルは船にいれば安全だ」
「だが、っ」
「大体な、男も女も関係ないんだよ。オレは助けたいヤツを助ける」
だからあんま気にすんな。された方が悪い気になるしな。
ヴェイグが逡巡の後頷いたのを確認して、顔から手を離す。ユーリは再びベッドに腰掛けながら、考えていた。
確かにこれといって仲がよかったわけではない。ないが、この程度のことでこれほど気に病むような人間だっただろうか。
まったく気にしない性格ではないだろうが、すまないとかありがとうとか、それで済むようなこと。逃げるほどに気にすることではない。
・・・ああ、そういえば逃げられたんだったか。
ふとそこに考えが及んで、なんとなく気が重くなった。
帰れと言われて、逃げられた。
「オレが嫌だったから、か?」
嫌われるようなことをした覚えはないが、そう思えば納得できないこともない。
「違う、それは、」
思わず口に出した考えに反論が返ってきて、ユーリは目を瞬かせる。
予想外だった。嫌なわけではないのだと彼は・・・彼女は言った。言葉を探している様子のヴェイグの目に嘘はない。
ユーリは安堵して、ベッドに転がる。それから、なんで安堵したのだろうと内心思った。
「・・・ユーリ?」
「ん、ああ、なんでもない」
ちょっと気が抜けただけだと、腕の下から言葉だけが返った。
(なにかがみえそうで、けれどみえない)
話がどこにいった。オチまで行かない気がプンプンするwww
乙女加減がもう極限すぎて笑いしか出てこない。でもユリヴェイなんだよ!←
どうやってユリヴェイにする気なのかわかりません。むしろ誰か続き書いてください←
そしてあんまり女体化の意味がなくなってきたような。いやでもきっかけだからいいよね
111203