「お帰り、ヴェイグ!」
「・・・マオ?」
ドアを開けてすぐ、身体に衝撃。ただいま、と言う間もなかった。
後ろのフレンに支えられてなんとか倒れることは免れたものの、結構な力だった。その胸の辺りに、少年が一人。
「ホントに女の子になったんだネ!かわいい!」
ぱっと顔を上げたマオがはしゃぎ出す。
ぎゅう、と腰の辺りに力をいれられ、腰も細いんだー、などとやりたい放題である。
まさかいるとは思っていなかった少年とその予想外の行動に呆気にとられ、ヴェイグは動けないでいた。
それを止めたのは、金の腕輪をつけた黒い腕。少年の首根っこをつかみ、ぐいとヴェイグから引きはがす。
思いの外強い力で今度はつれて行かれそうになった身体は、計ったようにいいタイミングで後ろからフレンが支えた。
さすがは幼なじみ、だろうか。
「よぉ、おかえり」
「・・・ただいま、ユーリ」
ぎゃーぎゃーさわいでいるマオを軽くいなしながら告げてくるユーリにヴェイグも返した。
今までマオと仲がよかったなんて話は聞いていないが、今日仲良くなったのだろうか。それに随分子供の扱いに慣れている気もする。
などとどうでもいいことを考えていると、後ろから声がした。
「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ」
「おう、助かったぜフレン」
急に呼び出したりして悪かったな。
ううん、デートみたいで楽しかったし。
・・・デート?
ユーリが眉を寄せたのに笑うフレンに向き直る。髪飾りが軽やかな音を立てた。
思わずそこに目をやるユーリとマオには気づかずに、
「フレン、今日はありがとう」
「こちらこそ。よかったらまたおいで」
いつでも案内するよ。柔らかに笑うフレンにヴェイグも知らず笑みを刻む。ちょっと驚いた様子の騎士が、それからさらに破顔した。
それじゃあ、と部屋を出ていくフレンを見送ってから二人を見やる。
「・・・どうした?」
「いや、なんでも・・・」
「ないヨ!」
ユーリがなぜか気まずそうに目をそらした。
反対にマオにはびし、と親指を立てられ、そうか、と返す。なんでもないなら、まあいいか。
それから一つ瞬いて、
「そういえば、マオ」
どうしてここにいるんだ?
(やべえな、まさかフレンが来るとは・・・)
(ユーリのせいだからネ!)
(・・・どうした、二人とも?)
((なんでも))
ようやく合流。短めですがとりあえず明るい感じで
ユーリさんにはなにか心境の変化があったみたいですね(笑)
120103