Eisblumelein:


 次の日。
 いろんな意味で爆弾を落としていった少年を恨みつつ、ユーリはヴェイグと顔をつき合わせていた。
 彼の姿は未だ彼女のままである。三日から五日というハロルドの言に間違いがなければ、早ければもうそろそろ戻るのだろうか。魔導師でもないヴェイグにマナ耐性がそれほどあるとは思えないから、まだ戻らない確率の方が高そうだ。
 考えながら、ユーリは欠伸を一つ。
「・・・眠れなかったのか?」
「ん?ああ・・・いや、」
 どっちだよ、と自分で思った。
 だって眠れなかったのだ、気になって。マオのせいで気づかなくてもよかった感情に気づいてしまって、おかげで気になって、だ。
 言及は避けよう。
 ユーリは溜息をつきそうになった自分を抑えて(目の前にはヴェイグがいるのだ。気にするに決まっている)肩を竦めた。
 まあ大したことじゃない、と言うと、ヴェイグは小さく頷いた。
 つっこむのはやめたらしい。ここでつっこんでくれてもいいのになどと考えてしまうあたり、どうやら大概である。
「今日は、どうするかな・・・」
 戻らないということはまだ船に帰るわけにはいかず。だからといってなにもないこの部屋でだらだらと過ごすのはユーリの趣味ではない。
 だからといってヴェイグをおいて出かけようとすればもれなく昨日の二の舞になるだろう。
 考えているユーリを見ていたヴェイグが、ふと首を傾げた。
「ユーリ、」
「ん?」
「依頼は、いいのか?」
 依頼。
 その単語を聞いてやっと、そういえば依頼を受けて出かけたのだと思い出した。
 ヴェイグの身を隠すのに、なにも言わずに出てきては問題になる。ただ出かけるというだけでは船を出ることはできない。
 そんなわけで、チャットに依頼をもらってきたのだが。数日出られるような依頼ということは、それなりにこなすのが面倒だということ。
 だから本当ならば、早めに取りかかっておくのが筋だったのだが。
 ああ、とユーリがもらす。
「そういや、そんなのもあったな」
 忘れてたわ。
 あっさり言ったユーリに、ヴェイグは僅かに苦笑を見せる。
 それに内心驚きながらもユーリは立ち上がり。ふと思い至って再びベッドに腰を下ろした。
 じっとヴェイグを見つめて、
「・・・待ってろって言ったら」
 青い瞳にこれでもかという不満の色をのせて、ヴェイグが無言をもって答える。
 しばらく視線を交わし合っていた二人だったが、結局先に折れたのはユーリだった。今度は大きく溜息をつく。
 これに関しては、気にしてもいいと思う。

忘れていたこと

(つーか、むしろ気にしてほしいところだな)
(・・・?)

  

ちょっと切るところが中途半端だったかも
これ以上続けるとものすごい長さになりそうだったので違和感を感じつつ切りました
しかしほんとどこに行きたいのか・・・←
120119