Eisblumelein:


 明るい日の射す入り口に立って、ユーリとヴェイグは周囲を見回した。
 依頼は全域に分布している珊瑚の採取。珊瑚自体はそこかしこに生えている。生えているが、おそらく求められているものはほんの一部。
 いっそ最奥に生息していてくれたら単純に奥まで進めばいいのだが。
「これは・・・骨が折れそうだな」
 肩を竦めて言ったユーリに頷く。
 けれどここなら魔物もそこまで手強くないし、慣れないヴェイグにも大丈夫だろう。ユーリはヴェイグを見やって、内心安堵した。
 行こうぜ、と肩を叩く。その肩が華奢なのをなんだか無駄に意識してしまって、自分を殴りたくなった。
 今はそんなことを気にしている場合ではない。
 昨日のマオのせいでどうも調子が崩れている。今朝のあれもたぶんそのせいだ。誰かそうだと言ってくれ。
 ちょっとした暴走を思い返して、ユーリは溜息をついた。向こうが何一つ気づいていないのは救いか、追い打ちか。
 それを見てわずかに眉を寄せていたヴェイグがいたことには、気づかなかった。
 二人で横並びに歩いて、採取ポイントでマトックを使う。珊瑚そのものは大量に採取できるのだが、依頼の品は確率でいえば十回に一回あるかないか。
 数日かかるかも、とチャットに告げられた通り、最早運の要素である。運が良ければ一日で終わるし、下手すれば一週間は帰ってこられない。
 ある意味今の状況にうってつけの依頼。
 ただし問題は解決しつつあり、今となっては面倒なだけの依頼である。
 ユーリは隣のヴェイグを見やる。いつもの大剣ではなく、ユーリのものよりもやや小振りの剣。カノンノのような例もあるし、女性の力では大剣が扱えないということもないだろうが、同じ比率で力は奮えたほうがいい。
 だから今のヴェイグに合わせて剣を選んだ。別に彼女が非力なわけではない。
 一般的に言えば強い方だろうが、いかんせん元の大剣が大きすぎた。
「・・・ユーリ?どうした」
「ん?いや、持ちづらそうだなと思って」
 戦ってるときは気にならないみたいだけど?と問いかけると、ヴェイグは少々眉を寄せて頷く。
 先ほどから座りが悪いのか右側から左側に、左側からまた右側にと鞘をつけたベルトの移動を繰り返していた。
 魔物を切り伏せるのに不都合はない。戦いになってしまえばそっちに集中できるし、剣は常に振るわれている状態だから構わない。けれど終わってしまえばどうも持て余す。
 ふだんは背負っている大剣とは違い腰につけておくしかないから、歩く度に大きく揺れる。
 どうやらそれが気になるらしい。
「じゃ、オレみたいに手で持つしかないな」
 ぶら下げている愛剣を持ち上げてみせる。ユーリは腰につけておくと邪魔だから外しているのだが、おそらくヴェイグも同じだろう。
 紐はちょっとしたオリジナリティ、といったところだろうか。しばし考え込んでいたヴェイグはそうだな、と言って、鞘ごと腰のベルトから剣を取り外す。
 ユーリと違って紐はついていないから鞘を掴んだ。うん、たしかに先程よりよっぽどしっくりくる気がする。
 どうだろう?とユーリを見やると、ユーリは小さく頷いた。
「いいんじゃないか。お揃いみたいで」
 からかうつもりでに、と笑ってみせると、ヴェイグはなんともいえない顔をした。
 その顔に違和感を感じて、ユーリはじっとそれを見つめる。嫌そうな顔と言うよりはどちらかというと、・・・照れてる?
 それを追求することはせずに、ユーリはヴェイグの行動を見守ることにした。
 やがて目をそらしたヴェイグが、あまり見るなと小さく呟く。
「!」
 思わず目を見開いたユーリが口元を覆った。
 隠しておかないと、口角が上がっているのを気づかれてしまう。笑っているとわかれば、ヴェイグはまた妙な方向に気にするだろう。
 しかし。
 どうしよう、かわいい。
 そんなユーリをヴェイグは怪訝そうに見つめた。逆に怪しいなんて、言わないけれど。
 ユーリは無理矢理口元を引きしめて、わざとらしい咳払いを一つ。
「行くか」
「・・・ああ」
 これは無意識なのだ。いやわざとでも困るが。
 だからいちいち反応していては身が持たない。平常心だ、平常心。
 ヴェイグより一歩前を歩きながら、ユーリは必死に自分に言い聞かせた。深呼吸をして、よし、と小さくもらす。
 依頼をこなすことに集中しよう、なんて柄にもなく真面目なことを考えて、マトックを握る手に力を込めた。

おそろい

(・・・けどさっきのヴェイグの顔・・・)
(ユーリ?)
(ああいや、なんでもねえよ)

  

ユーリさん、ユーリさん気持ち悪いよ?←
依頼の内容とか全然思いつきませんでした。なんだろう、黒珊瑚とか?
貴重品じゃないけどなかなかとれないもの。真珠でも問題ないですが
稼ごうと思ったけどイベントがあるわけでもなくたいした行稼ぎにならなかっry
どこにいきたいのかわからない様相を呈してきましたが、無理矢理オチまで持っていきたい今日この頃です←
大剣を背負ってるか微妙なんだけど、そもそも元絵だとヴェイグ大剣じゃないっていうね!(笑)
次回辺りから怒濤の鬱展開です!たぶん!←
120316