「あー・・・」
ベッドに突っ伏したユーリが、投げやりにぼやいた。投げやりなのはこの状況にではなく、自分に対してである。
好きとか嫌いとか、そういう類のものではなかったはずなのだ。少なくともヴェイグに協力しようと思ったときには。
そもそもの原因を作ったマオ坊やによって、いろいろと新しいものにどうやら目覚めてしまった、のはいいとして、だ。
ユーリとしては、認めてしまえばそれは問題ない。好きになるのに男も女も関係ない。
問題は大きなものが一つだけ。自分が惚れたのは、どちらのヴェイグか。答えがほしいのはそれだけ。
「オレはどうしたらいいんだろうな・・・」
女であれば、一過性とでもいうのだろうか、ある意味不毛な感情。けれど性別が関係なければ、それはそれで問題なのだ。
あいつは、そう言うことに関して、どうなんだろうか。
ヴェイグには幼なじみが・・・クレアがいる。彼女とはどういう関係なのか、聞いたことはない。家族のようなものだ、と誰かが言っていたが、それが兄妹(もしくは姉弟)のように仲がいいという意味なのか、まるで夫婦のようなという意味なのかでだいぶ変わってくる。
恋人のように見えないとは言えないが、そもそもあまり親交がないので判断材料が足りなさすぎる。
とりあえずはヴェイグが元に戻るまで、待つしかないということなのだろうか。
ユーリは考えに行き詰まって、大きな溜息をつく。
「ユーリ」
「うお・・・っと、どうした?」
いつの間にか近くにいたヴェイグがユーリを呼んだ。
考えていた内容が内容なだけにちょっと驚いて。けれどベッドに寝ころんだまま視線を向ける。
ヴェイグは困ったような顔をして、ユーリを見下ろしていた。
その表情に、ユーリは体を起こす。珍しく無表情とも言い切れない今のヴェイグからは、なんともいえない不安のようなものを感じる。不安というか、遠慮だろうか。
「別におまえのせいじゃないぜ」
まったく関係ないと言ったらそれは嘘になる。
というか大本の要因は確かにヴェイグなのだが。直接的な溜息の原因はヴェイグとは関係ないのだから、気にしなくてもいいことだ。
ヴェイグは頷いて、隣のベッドに腰掛けた。わずかに、溜息のようなものが聞こえる。疲れたという類のものか、それとも信じていないのか。
やがてユーリに視線を向けたヴェイグが、ぽつりと呟いた。
「・・・助かった」
「ん?」
「わざわざ、つき合ってくれて」
責任があるわけでもない。関係があるわけでもない。そんな言うなれば成り行きだったのに、ここまで協力してくれて。
もうすぐ戻ると思うから、言っておこうと思った。
ユーリは・・・だろう、な、という歯切れの悪い返事を返した。
ヴェイグは内心で首を傾げて、けれど続ける。
「・・・もしも明日戻らなくても、先に帰ってくれて構わない」
いつまでもこんなことにかまけて、これ以上迷惑はかけられないから。
明日戻らなかったとしても、数日で戻ることはわかっている。だから一人でもなんとかなる。
もう無理してつきあってくれなくていい。帰ってからは、オレのことはもう気にしなくていい。今までのように無関係でいてくれていい。
だから、
「待てよ」
思わぬ低い声が言葉を遮った。
(本当の心は隠したまま)
文章がずいぶん乱れてる感じですねすみません
すれ違い勘違い
120621