とある小さな町。
唯一の賑わいを見せる図書館の一角で、青年は新聞記事と向き合っていた。
新聞を読みふけっている・・・わけではなく、図書館に所蔵するために綴じているところである。それが今のところの彼の仕事だった。
様々な会社の新聞を綴じるから、新聞によって同じ日でも内容が違うのはおもしろい。だから見出しくらいには目を通している。あまりじっくり読んでいると仕事が滞るからできないのだけれど。
拾い読みにも似たことをしながら新聞を綴じていた彼は、ふと目に入った白黒の写真に目を奪われた。
「これ、は・・・」
「ヴェイグ?どうしたの?」
青年に少女が声をかける。いつもならもう綴じ終えている時間なのに、部屋から出てくる様子がないから見に来たのだった。
顔を覗かせると、ヴェイグと呼ばれた青年は新聞を一心に見つめている。呼んだことにも気づいていないかもしれない。
珍しい、と思いながら机に近づいて、肩に触れる。驚いて肩を跳ね上げたヴェイグが、少女を認めてクレア、とその名を呼んだ。
「なにかあったの?」
「これを、」
示した記事に、見覚えはない。
クレアが不思議そうにしているのに気づいているのかいないのか、ヴェイグは思い詰めた顔をして。
やがて、唐突に言った。
「すまない、しばらく休ませてくれ」
「・・・え?」
「辞めることになっても構わない」
言うだけ言って、ヴェイグは新聞を手放し足早に部屋を出ていく。さすがに図書館の中という常識があるのか走り出したりはしなかった。
クレアは突然の言葉に唖然としてヴェイグを見送る。あんなに慌てた青年の姿を見たのは、初めてだった。
そして彼は、次の日町から姿を消した。
(ヴェイグがあんなに慌てるなんて、初めて・・・)
ヴェイグさんのターン
今回のクレアの出番はここだけですごめんなさい
なんで図書館なのかよくわからないけど似合うから変更なしでw
130328