Eisblumelein:


 ユーリたちが戻ると、ヴェイグが困惑げに男を見上げているところだった。
 ヴェイグとはまた違う、銀色の髪をしている。ヴェイグの肩に手をやると、振り向いたヴェイグがどことなく不安げにユーリを見上げた。
 どうした?と問う前に降りかかる声。
「君はもしかして、フレンかな?」
「・・・ああ、そうだけど」
「やはりそうか!実にうれしいことだ」
 ユーリの眉が寄る。
 見知らぬ男に声をかけられてうれしいはずはない。そもそもこの男が声をかけたのはフレンであってユーリではないのだが。
 怪訝そうな顔をしているユーリに気づいたのか、男は小さく謝罪した。
 君も幼かったから、私がわからなくても無理はない。申し訳なかった。
 そう前置きして、
「私の名はアレクセイ。私にとって、君たちのお父さんは血を分けた兄弟のような存在だった」
 とても古い、友人だ。
 アレクセイはそう言って、懐かしそうに二人を見やる。
 小さかったと言っているがどれだけ昔なのだろうか。ユーリ・・・フレンでさえ小さくてわからなくても無理はないという。
 そんな子供と今の二人を見て懐かしく思うところがあるのかね。
 ユーリは思いながら、空いているイスを引き寄せた。
 アレクセイとヴェイグの間になに食わぬ顔で割って入る。そうして不安げなヴェイグの隣に腰掛け、アレクセイを見上げる。
「で、なんの用だ?アレクセイさん」
「今は再会を喜ぼうではないか。お父さんやお母さんは?元気かね?」
 ただでさえいろいろと立て込んでいるのだ。これ以上面倒ごとは増やしたくない。さっさと帰ってもらって、ヴェイグの件をなんとかしたい。
 思って辛辣に言ったユーリに少しも堪えた様子を見せず、アレクセイは言いながら残った席に座った。
 嫌そうな顔を隠すことのなかったユーリに気づいたか気づいていないのか、アレクセイは微笑を浮かべたままだ。
 質問に答えたのはヴェイグ。
「・・・父は死にました。母も二年前に」
「そうか、残念だ・・・。今はお兄さんと二人で?」
 本当に残念そうな顔をしているアレクセイを後目に、ユーリはヴェイグを見ていた。
 探し人になっていたのはフレンだけだ。つまりフレンより年上はいないことになる。間に誰かいればそっちが来るだろうし、ヴェイグよりも年下の兄弟がいたとすれば置いてくる訳にもいかないだろうから、ほかに兄弟はいないはずだ。
 つまり、二年前に母親が死んでから、一人。
 いえ、と答えかけたヴェイグを遮る。
「残念だが、オレたちは久しぶりに再会したばっかりだ。で、アンタの用事はなんなんだ」
 用がないなら帰らせてくれないか。兄弟水入らずで話すこともあるんでね。
 後ろの方にいたレイヴンが小さく笑ったが、肘を入れると静かになった。肘鉄にしては結構な音がしたから、かなりダメージは与えられたと思う。
 アレクセイは会話を打ち切るようなユーリの言葉にわずかに目を細め、
「ならば本題に入ろうか」
 その瞬間、彼の纏う空気が鋭くなった。

不穏

(アレクセイ、ね・・・)

  

いろいろとごめんなさいw
なにがごめんなさいってアレクセイさんがw
ほんとはがーっと長かったんですがちょっと切りました
続きももうちょっと早く・・・!
130428