「おっさん!」
バン、と大きな音を立てるのも気にせず、ユーリは部屋に押し入った。
床には大きなカバン。ソファには様々な洋服類。
隣の部屋から、レイヴンが現れた。
「あら青年。今ちょっと忙しいんだけど」
「旅行でも行くのか?」
ユーリは口の端に笑みを浮かべた。わかっていて尋ねる。
逃げる気かよ、おっさん?
言葉の裏にそんな意味を含ませているのは、きっと向こうもわかっているだろう。
けれどそこはレイヴンである。
「二人ともやられるよりはどっちか助かった方がいいでしょ?」
「金があるからってずいぶん勝手じゃねえか」
逃げるにしても金がいる。そして逃げるだけの金がレイヴンにはある。
これでもこの男、貴族である。遊び回っているのはそのせいだった。
金があるなら詐欺なんてするなよ、とつっこみたいところだが、もしかしたらいろいろと投げ出されたユーリのためを思ってのこと、だったのかもしれない。
・・・いや、ないか。
なんとなくフォローをいれようとして、さっさと放棄する。
考えるだけ無駄だ。
「ヴェイグはどうすんだよ」
かわいい子は放っておかないと豪語するレイヴンのこと、なにかしら反応があるかと口にする。
いくらなんでも危なすぎるでしょ、なんてまともな反論が返ってきた。
いつもならそうだな、と納得するところだが、そうはいかない。
ヴェイグは自分を必要としているのだ。頼られているのを無碍にするわけには、
「なに、もしかしてヴェイグちゃんに手出したわけ?」
「は?」
「ジゴロで詐欺師で文無しで宿なしの青年が!?」
思いもしなかったことを言われて、ユーリは目を丸くした。
そのまままくし立ててくるレイヴンにとりあえず拳を落として黙らせる。
なにをどう考えたら今の言葉が出てくるのかさっぱりわからない。しかもそれに動揺している自分がいるのもわからない。
落ち着け、今はそれどころじゃない。
自分に言い聞かせていると、ふとドアが叩かれた。
(なんていうかまあ・・・)
(嫌な予感、だな)
おっさん金持ち!w
レイヴンは阿呆全開と見せかけていろいろと考えてるところは考えてるよね、という
複雑すぎて本気で書こうと思ったらおっさん超難しいんだろうな
けどなんだかんだで安定のおっさんというのが理想(笑)
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