Eisblumelein:


 何年この金を求めて過ごしてきたと思っているのだろうか。自分はなんのために今までの時間を浪費してきたのだろうか。
 たぶん、そんなことを思っているのだろう。このまま自棄にならなければいいが、とユーリは頭の隅で考える。
 とにかくヴェイグは、守らなければ。
「撃って気がすむなら撃て。だが二人には関係のない話だ。巻き込むな」
 沈黙したままのアレクセイに向けて、ユージーンは何かを放る。木製の床に跳ねて、硬い金属音がした。
 視線を集めたのは、一枚の金貨。戦火を避けて別の国に渡ったときに一部を金貨に換えて持ち込んだのだと、ユージーンは語る。
 最後の一枚、お前の分け前だ。
 言い終わると同時に、アレクセイの腕が跳ね上がった。失望を通り越した無表情が、まっすぐにユージーンを狙う。
「くそっ」
「・・・兄さん!」
 銃声が響きわたる。
 動くつもりがなかったらしいユージーンを突き飛ばして、ユーリは舌打ちをした。銃弾が掠めた腕から血が出ている。
 それを認めて、ヴェイグが駆け寄った。ユージーンが起きあがり、自分を庇った青年を見つめる。
 明らかに動揺しているヴェイグを宥めようと口を開こうとした瞬間、派手な音とともにドアが開いて人がなだれ込んできた。
 警察。瞬く間に周囲を囲まれて、ユーリは溜息をつく。
 この状況では誤解しても仕方がないかもしれないが、自分たちはれっきとした被害者である。
「その二人は違うって言ってんでしょー」
「・・・おっさん?」
 まったくもう!なんて大げさに言いながら、レイヴンが二人を拘束しようとする警官を払いのける。まさかの人物の登場に、ユーリは目を瞬かせた。
 さっさと逃げたと思っていたが、意外にも手を回していたらしい。
 やだ友達じゃないのーとへらりと笑みを見せたレイヴンを無視して(もちろんしばらくうるさかった)ユーリはアレクセイを見やる。
 先陣を切っていたミルハウストとその部下が指示している話を聞くに、アレクセイは誘拐罪で逮捕されるらしい。結局は強盗容疑もかけられるのだろうが。
 そういえば自分たちも一応詐欺だったが、捕まったりしないだろうか、なんて頭の隅で考えた。

動き出す、

(そしてもうすぐ、終わりが来るのだとわかった)

  

短いですが話の流れ的にこの辺で
実際このタイミングで友達来たときすごいテンション上がったw
140302