Eisblumelein:


「ユージーン」
「・・・ミルハウストか」
 厳しい表情でミルハウストがユージーンを呼ぶ。顔見知りだったのだろうか、ユージーンも彼の名を呼んだ。
 強盗の容疑で逮捕する、と静かに告げたミルハウストに、彼は反論することなく頷く。
 ユーリの怪我をじっと見ていたヴェイグが、その言葉にはっと顔を上げた。
 ミルハウストと顔をつき合わせているユージーンになにか言おうと口を開き、それからなにも言えずに口を閉ざす。
 ユーリは見かねて、なあ、と声をかけた。ユージーンが振り返りヴェイグを捉え、目を伏せて呟く。
「すまない」
「・・・どうして、連絡してくれなかったんだ」
 オレも母さんも、ずっと待ってたのに。
 父さん、と続けたヴェイグに、ユージーンは首を振った。
 強盗の息子には、したくなかったんだ。既にミルハウストをはじめとする警察に追われている自分が家に戻ったり、連絡を取ったりしたら、警察の手がそちらにも回るかもしれない。噂が広まって、暮らしていくのに苦労するかもしれない。そんな迷惑はかけられないと思ったんだ。
 その言葉にヴェイグはぎゅっと眉を寄せて、
「・・・強盗でも、親子だ」
 ユージーンが、目を見開いた。
 ミルハウストに目をやって、頼む、と低く言う。ミルハウストは頷いて、彼の腕を拘束する部下に放すよう指示した。
 えっ、いいんですか?なんて騒いでいる部下に有無を言わさぬ視線を送る。
 拘束が解かれると、ユージーンは二人の元へ歩み寄った。ヴェイグの頭を撫で、頬を撫でて、目を細める。
「母親そっくりだ」
 ヴェイグが泣きそうな顔で小さく笑った。
 ユーリは隣でそれを見ながら、気づかれないように溜息をつく。よかったと思う気持ちと、なんとなく嫌な気持ちがない交ぜになっていた。
 そんなユーリに向き直って、ヴェイグが兄さん、と呼びかけた。
 応えるわけには、いかなかった。
「・・・オレは、ユーリ」
「え・・・?」
 父親と再会した。だから、もう終わりだ。
 どちらにしろユージーンの前で兄を名乗ることはできないし、潮時だ。
 そう結論づけて、初めて本当の名を名乗る。突然のことに混乱を隠せない様子のヴェイグにフォローを入れたのは、彼の父親。
「フレンは死んだんだ。寄宿舎を抜け出して軍隊に入り、それからすぐに」
「・・・悪い」
 ヴェイグの視線を受け止めて、ユーリは言った。
 ヴェイグの表情は様々な感情が混在していて、なにも読み取れない。怒っているのか、悲しんでいるのか、両方か。
 少なくとも、喜んでるってことはないだろうな。ユーリは自分の考えに自嘲して、ユージーンに目をやった。
 彼からも、なにかしらの責めはあるだろう。死んだ息子になりすまして口座の中身を掠め取った挙げ句、もう一人の息子を危険に晒したのだから。
 けれどそう思っていたユーリにかけられた言葉は、思わぬものだった。
「ユーリ、ヴェイグのことを頼む。お前にしか頼めない」
 そんな言葉をかけたユージーンは、それからヴェイグを見つめた。
 不安げな色を浮かべたヴェイグに笑みかけて、続ける。
 大丈夫だ。
「浮浪者にいつも酒をくれるような、親切な男だ」
 安心しろ、とユーリを示して、それから懐に手を入れる。
 取り出したのはコンパクトだった。お前の母親のものだ。言いながらそれを手渡す。
 預かっていてくれ、という言葉に、ヴェイグは小さく頷いた。
 それに満足げな顔をして、ユージーンは再びミルハウストを見やる。視線を受けて頷くと、ミルハウスト自らが手錠をかけた。
 後ろ姿に向けて、ユーリは言葉をかける。
「ヴェイグのことは、任せろ」
「・・・ああ、頼む」
 振り向くことなくそう返して、ユージーンはホテルを出ていった。

残されたもの

(いやー間に合ってよかった!)
(おっさん空気読めよ)

  

転がすぐ終わることに定評のあるわたしです←
ヴェイグ美人さんだからお母さん似でも大丈夫かなって
ヒューマ版ユージーンはきっとすごいイケメンだと思うんだ教官みたいな感じの
どうでもいいですねすみませんw
140302