花氷*


「うー・・・」

情けない声を上げるカロルをバカにする声はなかった。

なぜなら彼はベッドの上で、周りには誰もいなかったから。

今日は一日ベッドで絶対安静。

それが医者から下された診断だった。

  

朝。

目が覚めると暑いような寒いような不思議な感覚と、のぞき込むユーリとヴェイグの姿があった。

「お、起きたな」

言ったユーリが額に手を当て、すぐに眉を寄せた。

どうしたの?訪ねる自分の声も掠れていてよくわからなかった。

「風邪・・・かね?にしてはやけに顔真っ赤だけど」

「・・・林檎病、というやつかもしれない」

症状は風邪なんだけどな、と呟くユーリに、ヴェイグが返す。

聞き慣れない病名に首を傾げた。

カロルも聞いたことはなくて、動かない頭を傾げる。

少し動かすだけでくらくらした。

「アニーが旅の途中に看病をしたことがある。子供がかかりやすい病気で、頬が林檎のように赤くなることからそう言われているらしい」

「ふうん・・・。ま、とりあえず氷嚢だな」

ボクは子供じゃないよ!と反論する元気もなく、カロルは小さく唸るだけにした。

ユーリが苦笑する。なんだか身体が熱くなってきた気がする。

準備してくるから待ってろ、と言って踵を返したユーリを止めたのは、ヴェイグ。

「氷嚢はいらない」

「ん?」

ヴェイグは言うと、手のひらを上にして空中に出した。

それから数秒。青い光が集まったかと思うとそこに冷気が収縮する。

手のひらに現れたのは、氷。

「フォルスって便利だな」

「俺のはこれくらいにしか役に立たない」

「十分だって」

薄布に氷をくるみながら二人が話す。

フォルスで作られた氷は溶けにくいから、しばらく取り替えなくてもいいはずだ。

ヴェイグは言って、氷嚢を額に乗せた。そこから清涼感が広がっていく気がする。

ふう、と熱い息を吐いたカロルが、掠れ声でありがとうと呟いた。

「少し眠った方がいい」

ヴェイグは言って、冷たい手でカロルの視界を覆う。

その冷たさも気持ちよくて、カロルはすぐに眠りに落ちた。

次に目を覚ましたときには医者がいて、やっぱり林檎病だと診断された。

それからもう一度眠って・・・。思い出しながら無意識に額の氷に触れる。

寝ている間に変えたのかもしれないが、氷はほとんど溶けていなかった。

やっぱりフォルスって、・・・ヴェイグってすごい。

ちょっぴり元気になってきた頭で考える。

いいなあ、ボクもユーリやヴェイグみたいになりたい。

「起きたのか?」

ドアが開いて、湯気の立つお粥を持ったユーリが入ってきた。

林檎病

  

  

素直に林檎病にしてみた
そんなわけでカロル先生に出演してもらいました
たしか風邪とかは治癒術じゃ治らないんだよね?
フォルスの氷は溶けないと思う。暴走時は寒いところとはいえ一年(以上)溶けなかったわけだし
ユリヴェイ+カロルにしようと思ったはずがヴェイグとカロル、ユーリ友情出演みたいになった←
林檎病の症状についてはかなり適当です。調べてなんてない!←
101204