花氷*


「ファーストエイド!」

戦闘中、ヒスイの声が響いて、光の雫が降り注いだ。

その光を受けたまま、ディセンダーがナイフを振るう。

魔物が倒れたのを確認してから振り返り、笑みを見せた。

「お、ありがと、ヒスイ」

「おう」

軽く頷いて、ヒスイは刃を交える別の場所に目を向ける。

ヴェイグの頬に赤い筋ができている。実力的には余裕なはずだが、数匹に囲まれているために立ち回りが難しいらしい。

ヒスイはひとつ舌打ちをして、再び詠唱に入った。

「ファーストエイド!」

程なくその術を発動して、傷を塞ぐ。ついでに一つ二つ矢を放って敵を牽制した。

怯んだ相手をヴェイグが切り捨て、頬に残った血を拭った。

「・・・すまない、助かった」

「気にすんな。ほら、次来るぞ!」

ゴーグルを上げて答え、向かってくる魔物を示した。

ああ、と頷いたヴェイグに笑みを向ける。隙なく構えた背を見てから、ヒスイはもう一人に目をやった。

彼もまた囲まれているものの、立ち回りがうまいのか危険は感じられない。

それでもやはり細かい傷が蓄積しているらしいのを確認して、ヒスイは小さく溜息をついた。

「ファーストエイド!」

「サンキュー」

同じように詠唱を終えると、黒い背に光が降り注ぐ。結構な数の魔物を捌きながら、ユーリが礼を言った。

それに実に適当に頷いて、ヒスイは魔物をしとめる方に移行する。ユーリはちらりとそちらを見てから、すぐに敵へと注意を戻した。

「・・・なあ、」

戦闘後。

休憩、というディセンダーの号令に従って、敵のいなくなったフロアに座り込む。

おやつのピーチパイを食べながら、ふとユーリが口を開いた。

どうしたんだ?と尋ねる声に、

「オレだけファーストエイドの回復量少なくねぇか」

聞いたディセンダーの口の端が苦笑の形に持ち上がった。

ここの敵はそこまで強いわけではないし、怪我をすることもそんなにない。

今回は敵の数が多かったから苦戦したけれど、無傷で帰れることもままある場所ではある。

が、回復するならちゃんとしてくれよ、という話である。

その問いに、ヒスイははっ、と鼻で笑った。

「オレはまだお前をヴェイグの恋人として認めたわけじゃねぇからな!」

「なんでお前に認められなきゃなんないのかね・・・」

その答えにユーリがうんざりと顔を歪める。

相手が彼の妹だったならともかく、一応他人であるヴェイグのことにまで口を出してこなくともいいのではないか。

回復してくれるだけまだいいような気もするが。

この対象がコハクだった場合、下手したら回復してくれないかもしれない。と、ユーリは思う。

そんな二人を見て、ディセンダーが笑った。おいしそうな焼き色にナイフを入れる。

「ヒスイはみんなのお兄ちゃんだからな。ヴェイグもヒスイに懐いてるし。な、ヴェイグ?」

「・・・?」

はいどうぞ、と新しいピーチパイを渡されたヴェイグが、小さく首を傾げた。

癒し

(ヴェイグが懐いているから仕方ない、か)

  

  

ヒスイがヴェイグをかわいがってたらいいなぁという妄想
ヴェイグがヒスイに懐いてたらいいなぁという妄想
同い年だがなに気にすることはない(笑)
その場合ちょっとユーリさんに対してぴりっとしたらいいよ
たまにはそんな人も必要だよね!(笑)
あ、ディセンダーはちゃんと食事用のナイフでピーチパイを切り分けていますご心配なく!
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