花氷*


しゃかしゃか、と心地いい音が響く。

差し出された器を右に倣えでくるりと回し、ゆっくりと中身を飲み干した。

口の中に広がる苦みに顔をしかめそうになるのを必死に耐えて器を戻す。

自分の左側の人間が同じことをするのを横目に見ながら、窮屈な時間が過ぎ去るのを待った。

「ありがとうございます、先輩」

「いや、こちらこそ」

これで客引きになるなら、と続けて、アスベルが浴衣姿の女子生徒に笑みを向ける。

隣でティトレイがあからさまに苦い顔をしている。ただし彼の場合は相手がどうというものではなく口に残る味が嫌なのだろうが。

そのさらに隣では、セネルが曖昧な笑みを浮かべていた。苦みを誤魔化しつつ、どんな顔をすべきか計りかねている。なぜこんなことになったんだったか。

待ち人来たらず、だったのだ。

待ち合わせに遅れるなんてありえないから、たぶんクラスの仕事が長引いたのだろう。

怒るなんて気はさらさらない三人が、けれど時間を持て余した時だった。浴衣を着た一つ年下の少女がおずおずと声をかけてきたのは。

茶道部にお客さんが来ないんです、と、彼女は困ったように言った。

そこに反応した親切心の塊のようなアスベルが、ティトレイとセネルを巻き込んで茶道部の生徒の言われたとおりにしたのだ。それが、この茶道体験。

ティトレイはアスベルと同じく困っている人は放っておけないタイプだからいいが、セネルは正直そういう性格ではなかった。

面倒なことにはあまり関わりたくない。そんなクールな態度は、アスベルやティトレイと比べるとやはり近づきがたい印象を与えていて。

客引きならオレがいる必要はないだろうと断った、のだが。

「セネル先輩もぜひ!」

「あ、ああ・・・」

ものすごい勢いで言われてしまったら、さすがに断れなかった。

十数分ほど前のことを思い出しながら、セネルはちらりと横目で教室の入り口を見やる。なぜだか生徒が群がっていた。

これが客引き、なのだろうか。ただ茶道部の茶会を体験しているだけのような気がするのだが。

まったくわからない。気づかれないように小さく溜息をついたところで、見覚えのある頭を見つけた。

人だかりの向こう側にあった頭が少しずつその人だかりに飲み込まれていって、けれどその途端に、一斉に人だかりが割れた。

突然のことに驚いた様子を見せた彼が教室をのぞき込む。目が合うと、自然と頬が緩んだ。

「ヴェイグ」

「遅くなってすまない」

すごい人だな、と続けたヴェイグの声に反応して、アスベルとティトレイがぱっと顔を上げる。

アスベルが先ほど以上の笑顔を見せて立ち上がった。再び入り口に集まっている生徒に向けて、

「茶道部をよろしく」

なんともあからさまな宣伝をすると、セネルとティトレイを見やった。セネルは一応軽く頭を下げてから立ち上がる。

ティトレイも立ち上がる仕草を見せたのを見て取って三人は歩き出し、けれど。

「・・・ティトレイ?」

妙なうめき声にヴェイグが振り返る。

同じように振り返った先の光景に、セネルは呆れた溜息をついた。

茶の湯

(足・・・しびれた・・・)
(ティトレイ・・・)

  

  

中途半端で放置されていたのの続きを捻り出したらおかしなことに
だいたいセネル視点です。だいたい←
なんでこの四人なのか前の私に聞きたいところだけど好きだからいいかという・・・
四人とも学校で無駄に人気だったらいいと思います。でもみんな気づいてない
アスベルはいうまでもなく。ティトレイはフレンドリーなので。セネルさんとヴェイグはクールなイケメン的な。ヴェイグは美人枠かなw
セネルさんなんかは最初はすごい近寄り難い空気とか放ってて敬遠されてたけどアスベルとかと仲良くなったら意外にいい人だった・・・!みたいな感じだといい
ヴェイグが来たときに十戒状態になったのはそわーってなったからですw
そんなわけでこれから茶道部には人が大量にきます
無駄にぐだぐだと長くなってしまったすみません
120916